薔薇に込めた想い




「俺、毎月妻に花買って渡してるぜ!」



神託の盾騎士団、教団内、図書室での事だった。
アッシュから少し離れたグループが惚気合いだろうか、たまたまそんな会話が聞こえてきた。



「毎回花なんて喜ぶのかよ。俺のカミさんだった花より装飾品の方が欲しがるからなあ」

「妻自身が花が好きなんだよ。知ってるか?花ってそれぞれ意味があるんだぜ」

「あー花言葉ってやつだろ?」

「そうそう、色や数で意味も違ってくるらしくてさ、毎回選ぶ時頭使うんだよ」



花か。とアッシュはここには居ない自分のパートナーの事を思い浮かべた。

確かに花は一度も送った事がない。と言うか奴に花を贈るという発想さえ無かった
そもそも奴自身興味がなさそうだし。

あ、いや昔に【サクラ】の花が見たいと言っていたから全く興味がないわけでもないのか……



帰り道、気がついたら花屋の前に立っていた。
自分自身もそこまで花に興味がなかったのでいざ店に立つと予想を超える花の種類に圧巻される。



「いらっしゃいませ。贈り物ですか?」


全く動かないアッシュを見かねてか、店員が声をかけてくる。



「花は贈られれば嬉しいものか…?」

「え!?う、うーん、その人によりけりですかね」



少し困ったように笑う



「贈ろうとしている方はそこまでお好きでは無いんですか?」

「いや…嫌いではない…と思う」

「差し支えなければ私が見繕いましょうか?」



確かに自分では決め切れそうに無い。だったら慣れている店の人に頼むのが一番だろう。



「すまんが頼む」

「はい、ではそうですね…薔薇なんていかがでしょう」



案内された方向を見れば赤だけでなく、白や黄色など、色とりどりな薔薇が花を咲かせていた。



「花にはそれぞれ花言葉がありまして、色や本数によって意味も違ってくるんですよ」



そんな事を団員も言っていたな。とアッシュは教団で話していた団員の事を思い返す。

だが選んだところであいつがそんな花言葉まで知ってるとは思はないし恐らく気にも止めないだろう。

色は…やはり赤がいいか



「では赤を数本」

「良ければこちらに花言葉と本数の意味が書かれていますのでご参照ください〜」



そう言って一枚の紙を渡せれた。適当に済ませるつもりは無いと。
面倒だなと思いながらも文字に目を通す。




*******




「お決まりになられましたか?」



どのくらい悩んでいたのだろうか、軽い気持ちで買いに来た花にここまで苦戦することになるとは。

「…これで頼む」

「かしこまりました。では包んでまいりますね」



花を選んだだけなのにドッと疲れた。だがまだこれで終わりでは無い。
本番はこれからなのだ






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