永倉さんちの新八くん
□18
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午後の授業はとにかく眠気との戦いだ。お昼ご飯後の満腹状態に加えて講義という名の子守唄。なんとかして眠気を吹き飛ばすためにコーヒーを飲んだり、頬を抓ったりしてみてもあまり効き目はない。
Act:18
視点が合わずぼんやりとしたまま窓の外に視線を向けると、芝生に座り込み至る所でキャンパス内の建物をスケッチしている人がちらほらと見えた。校舎をスケッチする人や、遠くの方では噴水や大きな門をスケッチしたりする人の姿も。
「あ・・・」
芝生に座って校舎とスケッチブックを交互に睨みながら鉛筆を走らせる人達に再び視線を戻すと、その中に永倉くん、少し離れて平助くんの姿を見つけた。ということは、これはおそらく建築科の人達だろう。以前永倉くんが自分は建築科だと言っていた。工学部であることは知っていたが、建築科なのはつい最近知った事実である。器用な彼にピッタリだろう。
最近は何をしていても思い浮かぶのは永倉くんのことばかりだ。
この前はこれから先どうなることかと思った。私が映画館で寝てしまったことを怒っていたのかと思っていたが、どうやら違ったらしい。永倉くんの様子がおかしかった理由は結局分からず終いだったが、私を抱きしめてもう大丈夫だと言った。そう、抱きしめて。
「ふふ」
きつく抱きしめられた感触を思い出しながら嬉しくなって小さく笑い、シャーペンをくるっと回して握り直した。
勉強ももっと頑張ろうと決めた。永倉くんのように私もしっかりと考えを持ちたい。頼ってばかりいるのは止めだ。
永倉くんに置いていかれないように、私もこれから彼の後を追いかける。
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