その他4

□終の刻
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良く晴れた日だった。
オウマガトキを防いでから、もしかしたら一番の快晴だったかもしれない。

「……本当か?」

「はい、間違いありません」

そんな穏やかな里の様子とは対照的に、向かい合う2人の男の様子は堅い。

「そうか、ご苦労だったな。ゆっくりと休んでくれ」

大和は里の長らしく相手を労ったが、その言葉を受けた男、秋水はかぶりを振って否定した。

「いえ、これから忙しくなりますから、早速準備に取りかかります」

そうか、と返す大和の言葉を背中に受け、急ぎ本部から出た秋水は自らの心中、ひいてはこれから迎えるであろう里の未来とは真逆に晴れ渡る空を見上げ、呻くように声を漏らした。

「……解っていた事とはいえ、やはりいざ迎えてみれば穏やかではいられないものですね」

言ってから、大きく息を吐く。
らしくもない弱音だ。
誰にも聞かれなかった事に安堵した秋水は再び歩き出した。

晴れ渡るその日、里に走る感覚に、全てのモノノフが拭いきれない不安を感じた。

「何だ、これは……イヤな感じだ」

息吹は眉を潜め。

「依子殿、これは……!」

「うん、本部に急ごう!」

速鳥と依子は顔を見合わせて頷き合い、走り出す。

「疾風様……?」

「この感覚、知ってるぞ……!」

那木は常にない様子で空を見上げる疾風を心配そうに見つめる。

「こいつはっ……!クソッタレ!」

二度と感じたくはなかった感覚に、思わず富嶽は拳を打ちつけ、歯噛みする。

「そんな……!ねぇ桜花!ホントなの?」

告げられた言葉に初穂は思わず里一番のモノノフにすがりついていた。

そんな初穂に、絞り出すような声音で事態を告げる桜花の表情も、とても苦し気で。

「事実だ……、既にお頭や秋水も動き始めている」

逃れ得ない現実に翻弄されながら、それでも励ますように、あるいは自身を奮い立たせるように胸にすがる初穂の頭を撫でた。

しかし、そんな桜花の願いを打ち砕かんばかりに──

「……橘花っ!」

ガシャン!と耳障りな音を立てて茶器が割れる。だが、今の荒天の耳には届かない。
視界に映るのは倒れ伏した最も大切な掛け替えのない存在で。

「荒天さ、ま……」

掠れた声は弱々しく、額には汗が玉のように浮かんでいるのに、抱きしめた身体は震え、手は氷のように冷たかった。

何をする事もできず、荒天は橘花の名を呼び続ける。

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