その他5
□優しい手
1ページ/1ページ
背中、正しくは腰あたりに感じた温もりに、キリエは少し慌てた。
そういう事をするような子だと思わなかったし、たとえするにしても、それは他の誰かにだろうと思っていたから。
もちろん嫌だとかそんな事は思わない。
あまり普段から頼られたりする事もない自分にとって、こうして誰かに甘えられるのは嬉しい。
けれど、こうして頼ってくれた幼いこの子に、私は何をしてあげられるだろうかと考える。
何かあったの?
違う。
理由は確かに知りたいけれど、それは今聞く事じゃない。
振り向いて抱き締め返す?
それも違う。
こちらから動いてしまえば、きっとすぐに離れてしまう。
優しくしてあげたいけれど。
その優しさでこの子を傷つけてしまいたくない。
だから今できるのは背中に感じるこの子が、ティティスが自分から離れるまでじっとしている事だけで。