アイシ☆阿セナ

□好きだなんて言わないで
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阿含さんは女好き。そんなの知ってる。知ってるけど…っ
ずっと付き纏ってて数日前に僕に好きって付き合ってくれって言ったのに…今…目の前で、女の子の腰に手を廻して身体が密着するほど引き寄せて女の子の耳元で何かを囁いて優しい顔で笑ってる。それはどーみても友達じゃないことくらいいくら鈍い僕にだって分かる…。
僕…からかわれたのかな……そぅだよね…阿含さんモテるのに男で綺麗なわけでもない僕なんかに本気で告白してくるわけないよね…。はは…は…。最初は怖かったけど、僕にしか見せないって言ってた笑顔や電話かかってきて僕が元気ないと待ってろって言って遠いのに汗びっしょりで駆け付けてくれて一晩中一緒に居てくれた優しさが……大好きになってた。阿含さんが好き。だから告白されて嬉しかった。でも…浮気されるのは厭だから…それを言いたくて今日は阿含さんのいる学校へ来たんだ。


来なければよかった…っ
見たくなかった…っ

逃げ出したいのに足が固まって動けない…。見たくないのに目が閉じれない…。

阿含はガードレールに腰掛け長い足を投げ出し、足の間に女の子を抱き寄せ口説いている。女の子もまんざらでもなさ気に阿含のドレッドを触っている。その時、阿含が女の子を引き寄せキスをした。決して軽くはない深いキス。
それを見た瞬間、セナの目からはとめどなく涙が流れだした。

夜でよかったな。昼間ならこんなに泣いて恥ずかしすぎるよ…。…阿含さん……。…とにかく帰ろう…帰りたい…

なんとか足を動かして駅の中へ帰ろうと歩きだすと、誰かにぶつかった。
「あ…ごめんなさい…」
ぺこりと頭を下げてまた歩き出そうとするとその人に腕を捕まれた。
「セナくん?セナくんだろ?」
聞き覚えのある声に顔を上げるとそこには阿含の兄、雲水が居た。
「どーしたんだい?!」
泣いているセナの顔を見て驚いて覗き込む。その顔がセナの目の前にきた時、雲水の顔を見てセナは明らかに怯えた。
「…阿含と何かあったのかい?」
頭を撫でながら優しく問い掛けられてセナは雲水の胸に飛び込んだ。
「セナくん?!…どーしたんだい?とにかく家に移動しよう。ここでは騒がしくて話も聞いてあげれないからね」
戸惑うセナの肩を優しく抱き寄せて歩きだした。
「……っ」
セナの歩みが止まり明らかに身体が固まった。雲水がセナの目線の先を見ると、阿含が女の子といちゃついていた。

あぁ、そうゆう事か。あの馬鹿がっ!

「うっ…ふぇ…うぅ…」
セナがまた泣き出した。雲水の制服をギュウッと握る小さな手は震えていた。


「うわぁ見て〜!あそこで泣いてる子めちゃくちゃ可愛い〜てか、一緒に居るの阿含さんのお兄さんじゃない〜?」
…可愛い?…お兄さん?ん…?まさかな…セナがここにいるわけねぇし。

数々の疑問点を無視しながら女がキャーキャー騒ぐ方へ目線をやると、そこにはあってはならない状況が。
な、な、な、なんで…っ
なんでセナが雲子ちゃんの奴に抱きついてんだょ?!てか、なんでセナがここにいるわけ?…いつから居たんだ…ま、ま、ま、まさか…見られた…?!…雲水のあの目を見る限りやべぇな。。。あー…
「ちょっと〜!なんなの〜!」と怒る女を一睨みして黙らして阿含は必死で冷静を装いながら雲水とセナの側へ来た。雲水は今迄で一番恐ろしい顔で阿含を睨みつけた。セナはまだ阿含が後ろに来た事に気づいてなかった。
「あー…。セナちゃん?」
ビクッとセナの身体が震えた。でもこっちを振り返る事はなく、代わりに雲水が口を開いた。
「行こう、セナくん。…阿含、セナくんに何か言い訳できる事があるなら一緒にくればいい。」
セナと雲水の後をとぼとぼと歩きながら付いていき三人は家に着いた。
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