三國無双


□◆熱帯カタストロフィ
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「食欲の次は性欲ですか?」

 笑いを含んで揶揄えば、「オ前ニ言ワレタクナイ」と返って来た。

「それもそうですね」
「静カニ、シテイロ」
「ええ」

 諸葛亮のお喋りを制して、魏延の手がシャツの釦に伸びる。
 ぷつりぷつりと丁寧に外していく時間が、手つきがもどかしい。
 初めて魏延とこうなった時も、彼は見た目とは裏腹にとても優しく紳士的だった。
 宥めすかし、顔色を窺いながらの前戲にどこと無く無理を感じて、諸葛亮から求めて見せたらいとも容易に崩れる理性ではあったが。

(解った事と言えば……彼は随分と対照的な理性と野性の均衡の上に居る事くらい…)

 大学の構内で偶然見掛けて以来、頻繁に彼を探すようになった。
 探して、見付けて、目で追って、観察。
 些細な癖の一つすら見逃すまいとする諸葛亮の姿に、「それって恋ですよ」と指摘する後輩もいた。

 その後の行動は速かったと思う。なんとか彼に近付こうと随分手荒い真似もしたが、結果はしっかりついてきた。
 二人で暮らすまでになった今となっては、良いキャンパスライフの思い出だ。




「っ……」

 がり、と肩を噛まれて、諸葛亮は痛みに顔を顰めた。魏延に噛み付かれたらしい。
 どうしたのかと目線を合わせれば、不機嫌そうな表情の魏延が今しがた付けた歯型を舌でなぞった。

 ああ、拗ねた。

 どうやら考え事がばれたようだ。
 執着すれば人一倍独占欲の強いこの獣は、特に性交の折りに自分以外に意識が向く事を許さない。

「魏延…」

 諸葛亮が彼の体に腕を回して背中を撫でてやると、魏延が乱暴に口を塞いで来た。まだ少し怒っている様な口接けが深くなり、割って入って来た舌先に口腔内を責め嬲られて息が上がる。

「ふっ…ん、ぁ…」

 息継ぎもままならない程激しく貪られて、甘える様に声が零れた。
 その声に宿る蠱惑に惑う魏延が、獣染みた仕種で性急に諸葛亮の衣服を剥ぎ取る。
 スラックスの留め具を片手で外すのも手慣れたもので、数秒経たずに諸葛亮は一糸纏わぬ姿にされていた。

 機会的に冷やされた部屋の中で、魏延の掌が焼け付くように熱い。

「綺麗、ダ…諸葛亮」

 魏延が熱に浮かされて囁く。
 諸葛亮の傷一つ無い白い体が、魏延は好きだと言っていた。
 それを組み敷く優越と汚す背徳が、堪らなく心地良いのだと。



 熱い舌が肌を這う。

 ぞくりと粟立つ背中を弓なりに反らせると、大人しくしていろと言わんばかりにきつく吸われた。
 脇腹に、太腿に、膨脛にと、柔らかい場所にばかり歯を立てられてその度に体がびくびくと跳ねる。
 そのまま喰いちぎられそうな危うさと、それすら快楽となり兼ねない己が浅ましさ。
 いつか自分が死んでしまう時は、彼に食い殺されたいとも思う。

「っあ…」

 魏延の指先が、足を割って諸葛亮の体内に潜り込んだ。
 それと殆ど同時に体を起こされ、胡座をかいた魏延の上に跨がる形にさせられる。
 獲物を狩る猛獣の如き魏延の眼光に、全身が震えた。

 骨張った指が奥へとまさぐる感触に、痛みよりも快楽が勝る。肩に縋り付いてやり過ごせば、首筋を優しく噛まれた。

「痛イ、カ?」
「そうでは、なくて…」

 口を開くと嬌声が溢れ出しそうで、諸葛亮は唇を噛んだ。

 
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