三國無双


□酒に酔うなら
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 する方かされる方かと聞かれれば、どちらかと言えばする方だと思う。
 自分の顔の造作と体つきは、均整が取れていて決して醜くはなく、寧ろ美しい方だと言える筈だ。一夜だけでも、と縋る女も少なくは無いし、抱いた数も忘れた。

 男に関しては、いまいち想像が付かない。
 西涼の錦と名高い馬孟起の尻を狙うような愚か者は今まで現れた事などなく、知識には知っていたが実際に、とは考えたことがなかった。


 しかし今、この身を待ち焦がれた様に寝台に組み敷く男は、初めて見(マミ)えた愚か者であるのだろう。
 そしてそれに応える自分自身も、恐らくは彼に引けをとらない愚か者だ。

「嗚呼、やはり」

 顔の輪郭を舌先でなぞり、趙雲が感極まったように感嘆の息を零す。
 馬超の衣服はとうに乱され、上半身の布は腰帯だけで止まっているだけ。
 肩や腕に纏わり付く布地がまた一層淫らで、男が深層に抱えた征服欲が頭を擡げる。

「やはり貴方は美しい…」

 熱に浮かされた低い声に耳朶を擽られて、ぞくりと疼く。
 ただ触れて撫でるだけの趙雲の掌に、異常なまでに反応する体。興奮から掠れた声に、焼けるように熱い手に、馬超は追い詰められていった。

 焦らしているわけではないのだろうゆったりとした趙雲の愛撫は、漸く手にした玩具を一心に愛でる子供を彷彿とさせる。
 肌の熱や手触りや、もどかしい動きに馬超の複雑に歪む顔を愉しんでいた。

「随分と…余裕の有る態度だな、趙雲殿」
「まさか。貴方に触れるたびに胸が高鳴りすぎて、張り裂けてしまいそうなのに…」

 深く舌を搦め捕られて、返す言葉が音になる前に飲み込まれていった。
 彼の苦悩を真実にする貪欲な口接けに喘いで吐息を漏らせば、名残惜しげに解放される。

「…後悔は、なさいませんか」

 ぽつんと今更の様に不安げに落とされた問いには、鼻を鳴らして否とした。

「なんだ、怖じけづいたか」
「事が済めば、再び貴方は私の手を擦り抜けるのやも…と考えると、些か」
「酔いが覚めれば、さもありなん」
「絶対に?」

 馬超は肩を竦めて、自ら腰帯を外した。

「具合が悦ければ、俺も考えてしまうやもしれんな」

 遊び慣れた仕種で、笑う。犬歯が覗く。
 趙雲がごくりと喉を鳴らした。

「後悔なさっても、知りませんよ」
「ふん、お互い様だろう」

 見つめ合っての沈黙の後、合図もなく二人は互いの唇を貪りあった。





 
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