短編4
□月2
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朝眠りにつく頃楼の中が騒がしく動いた
肌掛けを羽織り戸を開ける
また1人居なくなった
病気になりろくに薬を与えられず死すもの
耐えられず逃げ捕まり拷問の末死すもの
いつか店主が放った
使えないものはいらない
その言葉が脳裏に浮かぶ
誰1人涙を流す事なく
もう抜け出す事さえ無駄な事なのだ…
『キム様お久しぶりでございます』
部屋に渦巻くお香の匂い
ユラユラと揺れる蝋燭の儚い光
シュルリと帯をときパサリと肌掛けを畳に落とす
寝間に横になり股を開き誘う
『キム様きて下さい』
気が可笑しくなる程気持ちのいい肌の感触
『ユノ…君を本当に喰らう事が出来るなら…』
ゆるりと腰を打ち付けながら目や鼻に噛みつかれる
『あぁぁっ…』
喰ろうて下さい…
貴方様の望むように…
私を外の世界に連れて行って下さい
『海が見とうございます』
『今度貝殻と言う物を持ってきてあげるよ』
情事の後浅く息を吐きながら私の汗に濡れた髪を優しく鋤く
貴方様はまだ私を喰ろうてはくれませぬか?
薄く開いた窓の隙間から今日も月が笑って私を見ていた