テイルズBL小説

□小さな一歩、大きな一歩
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最近モヤモヤするんだ。
剣を振っても消えなくて。
空を見ても気晴らしにはならなくて。
これが何なのか分からなくて、最近は甲板でボーっとしてる事が多くなった。








果てしなく続く地平線。
時折やってくるカモメ。
何日この光景を見ているだろうか。



「悩んでいるのか?」



俺の後ろに居たのはクラトス。
近寄りがたい雰囲気なのに、コイツはドコか優しい存在。

「何か…モヤモヤするんだよ」

剣を振るっても物足りなさを感じる。
何でかが分からなくて、行けるモンスター退治の依頼はほぼ請けた。
振るっても振るっても、何も変わらなかった…。

「前はこんな事なかったけど、最近駄目なんだ…」

ココに多くの人間が住むようになってから、自分の中で何かが変わった。
胸が騒いで、何かに追われて、何かに焦っている。
何かに恐怖している。

「…その正体が分かった時…」
「…?」
「お前は今より強くなるだろう」

ポンとクラトスの大きな手が頭に乗っかる。
ゆっくりと顔を上げれば、あまり見た事のない穏やかなクラトスの顔。

「焦るな。お前ならいつか辿り着ける」

頭から温もりが消えれば、クラトスは船内へと消えて行った。

何だかか胸につっかえていたモノが消えた気がする。
気持ちが落ち着いて、口許が緩んだ。

「あ〜…腹減ったな」

久しぶりにファラのオムレツを食べに行こう。
そう思い、甲板を後にした。










それは小さな小さな一歩



焦らなくて良いのだと教えてくれた。



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