テイルズBL小説
□嫉妬して嫉妬される話
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甘い香りの漂う食堂。
そこに居るのはパニールではなく、リリスやクレアでもない黒。
普段流しっぱなしの長い髪は高い位置で一つに結ばれ、彼に似合う黒いシンプルなエプロンを身に付けキッチンに立っていた。
その作業を、手前のテーブルに座って見守るのはリッド。
甘い香りに胸を踊らせ、出来上がるのを待っていた。
「出来たぞ」
「美味そう!」
机に置かれたのは、白いクリームや真っ赤な苺でデコレーションされたショートケーキ。
「いただきます!」
フォークも使わず手で、カットされたケーキを口に運んだ。
「うめぇ〜」
「そりゃ良かった」
リッドに遅れ、ユーリもケーキを一口。
程よい甘さが口に広がり、苺の甘酸っぱいも丁度良い。
ユーリは『上手く行った』と心の中で小さく笑った。
「なぁ、もう一個食って良いか?」
「あぁ、良いぞ」
リッドは普段より幼く見える笑顔をしてから、切り分けられていた残りのケーキを一つ掴んだ。
「やっぱうめぇ〜…ユーリって料理上手いよな」
「まぁ、独り暮らしが長かったからな…お前口の横にクリーム付いてるぞ」
人差し指でリッドのそれを掬い、自分の口へと運んだ。
「ん、サンキュー」
そう言って、リッドは残りのケーキに噛みついた。
そんな二人のやり取りを、扉の隙間から覗いて居る者が二人。
「…」
「…」
中を覗くのは、ガイとキール。
ユーリとリッドの恋人だったりする。
「普通、口に付いてるの取ってやって自分で食べるか?」
「リッドも何も言わないし…」
自分の恋人が、他の誰かとやたら仲が良いと良い気分はしない。
『ケーキまた作ってくれよ』
『ん?良いぜ。俺も甘いの好きだし』
「…甘い物が好きなのか…」
「ケーキ…食べたいのか…」
「「作るか」」
「ガイ、砂糖はこのくらいか?」
「あぁ…それをココに入れて…」
食堂のキッチンに並ぶのは、黄色と青。
シンプルなエプロンを身に纏い、白いクリームを掻き回す。
「生地はどうだ?」
「まだ温かいからもう少しだな」
甘い香りは廊下まで漏れ、人を誘う。
「アイツ等何してんだ?」
「匂いからしてケーキ作ってるみたいだな」
『キール、指にクリーム付いてるぞ』
『あ、ホントだ』
「楽しそうだな」
「…」
『生地冷めたぞ』
『それじゃ、クリーム塗るか』
「何か…」
「「ムカつく」」
恋に嫉妬は付き物
「出来たな」
「ユーリとリッド、食べてくれるかな?」
((俺達にだったのか))