カカシ×ナルトのお部屋

□涙の唄
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「ちょっ……ナルト?!」

大きな瞳からぼろりと零れた涙にカカシは些か狼狽した。
病院のベッドの上、手を伸ばせる場所は限られているが、それでもカカシはナルトに触れようと必死で手を伸ばした。
ようやく触れることのできた手をしっかり握ると、鼻を啜りながら声を殺して泣く愛しい存在に優しく囁いた。

「…ナールト…?オレ、ちゃんと生きてるよ……?」

たった数時間前。
カカシの心臓は止まっていた。
ペインとの闘いですべてを出し切ったカカシは、瓦礫の中で意識を手放したのだ。

まぁ、そのおかげで長年の蟠りがなくなったわけだが。

だから正直、死んで良かったとも思った。
それをうっかり口に出したら、ナルトが泣き出してしまったのだ。

(そりゃそうだよねぇ…)

自分が必死になって助けたのに、死んで良かった、なんて言われたら泣きたくもなる。
それが恋人なら尚更。
カカシはまだ動かない体を無理やり動かして、ナルトの細い体を抱きしめた。

「ごめん。ごめーんね」

カカシが謝ると、ナルトは更に泣き出した。
とめどなく溢れる涙は、シーツの上をどんどん濡らしていく。
我ながら情けなくなるとカカシは苦笑した。

自分の部下で、14も年下で、おまけに男の子で。
そんなナルトと恋仲なのはよしとして、自分のせいでこんなにも心配させた。
本当に情けない……

「カカシ先生の……ばかっ……」
「うん」
「ホントに…っ……バカだってばよ…!」
「うん」
「本気で……心配した…!」

カカシの手の中で大人しかったナルトの小さな手が、ギュッとカカシの手を握った。

「本当に…………本当にもうっ…二度と会えないかもって……!!」
「――ナルト………!」

堪らなくなって力強く抱きしめると、ナルトはついに大声をあげて泣き出してしまった。
カカシのシャツをぐしゃぐしゃに握りしめて、生まれ落ちたばかりの赤子のようにひたすら泣き続けた。

たった一つベッドのある物寂しい病室の中で、誰かを想って泣くその声は、どこか美しく聞こえた。
まるで、聖母が歌う慈愛の唄のような。

愛しい恋人に心配させて、泣かせて…
ろくでなしのようだが、不謹慎にもカカシは、愛情を感じてしまった。

きっとこの愛情は自分にしか向けられない。
そう解ってしまったから。

「……ナルト」
「ん゛……?」

ずびずびの声で返事をする愛しすぎる人にちゅっと軽いキスを贈る。
そして、もう一度ギュッと抱きしめた。

「大丈夫……絶対お前より先に死んだりしないから」
「…へ…?」

(もう二度とこんな思いをさせるもんか)

腕の中に最愛の人をがっちりを抱き込んで、いまだ目をぱちくりさせてる恋人に、今度は自分が泣きそうになりながら唇へ吸いついたのだった。

fin.






走り書きってよくないね…orz

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