大好きです、レッドさん!

□1話
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シンと静まり返った洞窟内を進む。
正直、身体も限界、精神的にもかなり追い詰められていた。


倒しても倒してもキリがない、しかもそこそこ強力な野生のポケモンたち。
できる限り逃げていたが、足が悲鳴をあげている。


洞窟から抜けると、周りは白一色。
出れたんだと安堵したのもつかの間、すぐ横に、ロッククライムポイント発見。
まだあるの!?


しかしここで立ち止まっては、今までの苦労が水の泡だ。
頑張ってくれた手持ちのみんなにも申し訳がたたない。




行こう。
諦めないで進むんだ。
まだ、こういった困難が待っているなら乗り越えればいい。


腰のボールホルダーから一つ、モンスターボールを手にとった。
もう少しだから、お願い、力を貸して!




上に向かって、軽く投げた。
ポン、と小さな音をたて、光を纏う。
光が晴れて、私の前にいるのは、鋭い爪を持つザングース。
ここに辿り着くまでに負った疲労のせいか疲れて覇気がない。


大丈夫かと声をかけると、まだまだやれると爪同士をぶつけた。
ごめんね、ギリギリまで回復薬を使おうとしない貧乏性で。



鋭い爪を山肌に立てぐんぐん登っていく。
空気を切る度に、冷たい風が頬を掠める、というか突き刺す。
痛い痛い痛い!!




登り終わってからザングースをボールに戻す。
ありがとうね、少しでも休んで。


ボールをしばらく見つめ、前を向いた。
そこには、私たちを喰らおうとしているかの様に、ポッカリ空いた穴。
来いと挑発してるみたいだ。




いってやろうじゃんか。
待っているんでしょう?この先に。
伝説と呼ばれ、しかし忽然と姿を消した。
あの人が。




会うためにこんな厳しい場所まで来た。
会わないで終わって後悔するのだけは絶対にいやだ。




雪で半分埋まってる靴の紐を、きつく結び直して。




私や仲間を喰らおうと巨大な口を開けている穴へと。




走った。









中は、さっきまでいた洞窟よりもいっそう寒さが厳しかった。
服を一応着込んではいるが、隙間から風が容赦なく侵入する。
うー、寒い。




よし、休憩終わり!




今までに溜まった疲労も幾分かとれた。
するべき事は、目の前の永遠に続きそうな一本道を突き進むこと!
真っ暗で、果ての見えない道。
こんなことで怖じけつくと思ったら、大間違い!
ますます燃えるたちなんだよ私は!




まるで徒競走のように駆けた。
寒くて痛いけど、気持ちがいい。
そうしてしばらく走っていると、またロッククライムポイント発見。
きっとこれが最後の難所。
だって上から仄かに光が差しているから。
もうすぐ外に出られるんだよ。
あとちょっと!


悪いと思いながらもまた、ザングースをボールから出した。
本当にごめんね、と謝ると、気にするなと胸をそらす。
フカフカしていそうな体毛が、一瞬だけ弾んだ。


そうだよね、ここまでこれたんだ。
みんなはヤワじゃない。
それなりに強いしたくましい。
こんぐらいへっちゃらだ!


ピョンとザングースの背中に飛び乗った。
それを合図にぐんぐんと進む。
登り終わると、外へ繋がる出口。


背筋に冷たい何かが走った。
ザングースも毛を逆立て威嚇。
ボールの中のみんなも、外からの何か絶対的なものを感じ取ってるみたい。


とうとうかな。


ここを進むのには、覚悟を決めなくてはならない気がする。
ま、でもさ。
聖域と呼ばれるこの山に、足を踏み入れた時点で、そんなもん決まってるんだ。


みんなとそれぞれ顔を見合わせて、きちんと回復させてから。
出口へと足を動かした。















(私の運命の別れ道)


(きっとこの時だったんだ)







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