大好きです、レッドさん!

□5話
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レッドさんに差し入れを渡した一件から、ちょくちょくシロガネ山に遊びにいくようになった。
何度も行ったり来たりしてれば、おのずと慣れるもので。
初めて来たときよりとても短い所有時間で頂上へ着くことが可能になった。
進歩って素晴らしい!






「レッドさーん、どうもです!」






野生のポケモンとのバトルが終わった頃を見計らって話しかける。
私の姿を確認すると、今まで出していたリザードンをボールにしまい、これまたやはり無表情で近づく。






「……また、きたのか?」


「ハイ、来たいですから!」






変な奴、とあの時と同じ言葉を口にして、いつもの洞穴へ向かう。
何も言わずについていく私の事は無視をしているのか、気にしていないのかわからない。




あれ、両方意味おんなじじゃん。






ボス、と座り込み、リザードンをまた出した。
すぐ出すならしまわなきゃいいのにと言いそうになった口に蓋をする。
危ない危ない。






『ちゃあ!』






可愛らしい鳴き声をあげて私の右足にくっついたのはピカチュウ。
勿論彼のパートナーのだ。






「わあ、ピカチュウ!」






優しく抱き上げると、黄色い体を擦り寄せられた。
服の上からでも気持ちいいね、フッカフカ!






『ピッカ、チュウ!』






服のはしを控えめに引っ張られた。
何か訴えられてる?
もう片方の小さな手で指してる方をみた。
先にはボーッとして、どこを見てるか理解できない私の思い人。
まさか隣にいけと!?


私の疑問を感じ取ったのか、満足そうにコクと頷く。
え、いやだ。
恥ずかしいって!


話すのはそうでもないけど、傍にいるのは気恥ずかしい。


断りの念をタップリ込めて首を横に振ると、ますます服を引っ張るピカチュウ。




わかったよ、行けばいいんでしょ、行けば!!




緊張に震える足でレッドさんの隣に座った。
私が座ったのを気にもとめないのが、ああ脈ないなと実感させて、気持ち落胆。


ピカチュウのおバカさん、と心の中で言いながら赤いほっぺたを突っつく。
くすぐったそうに身をよじるけど、逃がさないよ!




けれど、ピカチュウの方が一歩上手で。
するりと私の腕から抜け出した。
あ、行っちゃった。







「よく来るけど、なんで?」






あまりに動かないので、寝てると判断したレッドさんから話しかけられる。
うわ、ビックリした。






「なんで?」


「え、いや、何でって聞かれても、来たいからなんですよね、はは。」






上手く表現できなくて、自分でも何が言いたいのかわからない。
ふーん、と興味無さげに溢したレッドさん。




心に鉛が落とされた気がした。
泣きそうになる、なんか辛いなあ。


キュウと胸の奥が締め付けられて痛いよ。苦しいよ。






「迷惑、ですよね。」






涙声にならないようこらえながら呟いた。
彼は帽子を脱ぎながら。






「……別に、迷惑じゃない。」






沈んでいた気持ちが一気に浮上した。
単純かも知れない、でも違う意味で泣きそうだよ。






「突然来られるのは、驚くけど。」


「じ、じゃあ番号交換しましょうよ!!」









ポケギアを持っていても、使い方を知らなかったレッドさんの代わりに、彼の分も作業をした。
レッドさんのポケギアに登録されたのは、私だけ。


自分のポケギア画面にハッキリ映る、彼の番号を見て、自然と笑みが零れた。















(断らなかった貴方に)


(一瞬でも期待したらダメですか)







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