大好きです、レッドさん!

□7話
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ザックザックと軽快に雪を踏み鳴らし、シロガネ山を登っていく。
うーふふふ!
気分が最高なんだ!




ちょっとぶりにレッドさんと顔を合わせられる。
どれほど私の心を弾ませたか。


フンワリと温かい気持ちのまま、頂上に向かった。
レッドさんは、一本道のはしっこに、雪に身を打たれながら立ち、私を見据える。
相変わらずの薄着に、私の方が寒くなる。
お願いだから、防寒してください。
目に毒なんですその恰好。
レッドさんが風邪をひかないかハラハラドキドキです。




自然と小走りになって、彼の元へ向かった。
レッドさんの足元にチョコリと座り込んでたピカチュウは私に気づくと身体を擦り寄せてくれる。


可愛いなあ、もう!




ジッと私を見つめはするが喋りかけないレッドさんに脳内で苦笑した。






「お待たせしました、始めましょうか!」


「…………ああ。」






静かに、けれど鋭さを秘めた返答に背筋が凍る。
目の前の人物から発せられる重圧。
重いけど、嫌じゃない。




ホルダーに手を伸ばし、ボールを高らかに投げた。









「あー、負けちゃったあ!」






前は勝てたのに、と口を尖らせる私を、珍獣だというように見るレッドさん。

そんな目で見ないでください!
ドントルックミー!






「また。」


「え?」


「また、強くなった、な。」






その一言で一気に浮上した。
我ながら単純だけど、嬉しいの、仕方ない。


そうですかね、と照れ隠しに髪を弄った。
雪で濡れてヒンヤリしてたけど、心も顔も熱くなってる私にはちょうどいい冷たさ。




洞穴に行ったら、やっぱり寒くて、バクーダにボールから出てもらった。
ゴメンよ暖房がわりにして!
暖まりながら謝ると、物欲しげな目で私をみた。
わかってるよ。
前にレッドさんにあげた新作ポケモンフーズでしょ。
買ってあげる。


ベッタリとバクーダにくっついていると、不意に震えたポケギア。
首から下げてあったので取り出すとグリーンさんからだった。
何か用かな?
せっかくレッドさんと一緒にいるのに!
邪魔しないでよ!




私の願いを裏切って無情にも鳴り続けるそれ。
グリーンさんのおバカ。
今度会ったら覚えてろ、こてんぱんにのしてやるから!……たぶん。




ちょっと、レッドさんやバクーダから距離をとって通話モードにした。






「へい、もひもひ。」


《ふざけてんのか?》


「いいとこを邪魔されたのでささやかな抵抗です。」






どうぞお受け取りください!
イライラを多少込めながら言うと、オイ!とつっこむ。
ナイスツッコミ!!
……って違うでしょ。






「何か用ですか?」


《いや、レッドの様子はどうかと思ってさ。》


「いたって健康ですね。ついさっき吹雪く中でバトルしましたし。」


《アホかー!!》






あまりにも大きいグリーンさんの叫び。
ポケギアを耳から離しても、ゆうに聞こえる。
耳が痛いですよ、すこぶる痛いのですよ。






《っはあ、まあいい、アイツは元気なんだな。》






ええ、と確信をもって答えるとわかったと返事。
その後にお礼を言われて切れた。
お騒がせだなあ、もう!




戻ったら、私の方をレッドさんが絶対に向かなかった。
どうしたんだろう?





「レッドさ……」


「……グリーンと、仲良い、な。」






気のせいだろうか。
不機嫌そうな声色だった。
ビクリと肩が震える。






「別に、それは……」


「邪魔だ、帰れ。」





その一言は、完全に拒否の言葉だった。




ほんの少しだけど、近づけたと思ってた。
けど、所詮私の願望に過ぎなかったんだ。















(伸ばしても届かない)


(所謂悲恋でありましょうか)







*


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