無重力アイラビュー
□1.地球の外から、こんにちは
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「翔さーん?……なんだ、まだ仕事してたの?」
ドアの隙間から、ひょこりと顔を出して。
呆れるように溜息吐くのは、同僚の二宮和也。
自ら“営業は天職”と豪語するだけあって。
成績は、常にトップを収めており。
社内では、彼に売れない物はないんじゃないかって噂されてるくらい。
味方にすると心強いけど、敵には回したくない男だ。
「……いや、あいつ今日はデートだって言うからさ?」
必死で頼み込まれて、無碍に出来なかったんです。
「……もう、何回目の“一生のお願い”よ?」
「……4…いや、5回目か?」
パソコンから、目を離さずに呟くと。
「……人が良いのも、大概にしないとね?」
コトリ、俺の傍らに置かれたドリンク剤。
「……じゃあ、俺、明日早いんで。精々、頑張って下さい。」
ヒラヒラと手を振って去っていく、その後ろ姿を見つめて。
手伝っては、くれないのね。
なんて、心の中で呟いてみた。
いや、口にしないよ。
後で、何奢らされるか分かったもんじゃないから。
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