無重力アイラビュー

□1.地球の外から、こんにちは
1ページ/10ページ




「翔さーん?……なんだ、まだ仕事してたの?」




ドアの隙間から、ひょこりと顔を出して。
呆れるように溜息吐くのは、同僚の二宮和也。
自ら“営業は天職”と豪語するだけあって。
成績は、常にトップを収めており。
社内では、彼に売れない物はないんじゃないかって噂されてるくらい。
味方にすると心強いけど、敵には回したくない男だ。




「……いや、あいつ今日はデートだって言うからさ?」




必死で頼み込まれて、無碍に出来なかったんです。




「……もう、何回目の“一生のお願い”よ?」




「……4…いや、5回目か?」




パソコンから、目を離さずに呟くと。




「……人が良いのも、大概にしないとね?」




コトリ、俺の傍らに置かれたドリンク剤。




「……じゃあ、俺、明日早いんで。精々、頑張って下さい。」




ヒラヒラと手を振って去っていく、その後ろ姿を見つめて。



手伝っては、くれないのね。




なんて、心の中で呟いてみた。




いや、口にしないよ。
後で、何奢らされるか分かったもんじゃないから。





次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ