無重力アイラビュー
□5.ビッグバンは、突然に
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それじゃ、行こうかとサトシ君の手を引けば。
何故だか、動こうとしない彼。
「…サトシ君?」
どうしたんだろ?
具合でも、悪いのかな?
「どっか、痛い?」
いつも、素直で良い子の彼が。
お出掛け前に愚図る事なんて今までなかったから、正直かなり心配だ。
覗き込むように、その表情を確かめれば。
フルフルと頭を振って、キッチンの方を指差した。
「……さーもん。」
え?
サーモン?
サトシ君には、申し訳ないですが。
こっちは鮭漁に出た覚えも、羆になった記憶もございません。
理解出来なくて、固まってる俺の横をスルリ擦り抜けると。
青い水筒を抱え、目の前に突き出してくる。
「しょう、さーもん。」
いや、水筒です。
どっからどう見たって、魚には見えません。
「サトシ君、それは…。」
水筒だよって、言いかけて思い出した。
先日、これと色違いの紫色の水筒を松本届けた時。
水筒、使ってくれって言った俺に対して「翔君。それ、サーモボトルっていうんだよ。」なんて、笑った松本。
その時は、流石シャレてんなぁとか感心してたけど…。
サトシ君、間違えて覚えちゃってるじゃねぇか!!
全然、水筒でいいのに!!
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