蒼天の使者
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「あ、カケルせんぱーい」
「ん?どうした?」
オレのところに元気よく来てくれる後輩達。忍者学校をつい先日合格した子達。オレのもとに寄ってくる事はもう日常茶飯事なことだった。
「カケルさん、聞いてください!今日、Dランク任務でしたけどまさかのCランク並の任務だったんです!」
「(え?)そっかー、怪我はしなかったか?」
「はい!それに、里の外に行きました!!」
後輩の言葉にちょっと耳を疑うが、今の木の葉の現状を知っているのなら仕方がない。だが、よく頑張ったなって褒めてやりたい。ホントは辛かったはずなのに、苦しかったはずなのに頑張って任務をこなしたその敬意に表して褒めてやりたい。
「で、感想は?」
「はい!もうとても凄かったです!!僕、木の葉の里の外を行ったことがないからとても愉しかったです!!」
「・・・・・・そっか」
少年の生き生きとした顔を見ているととても心地が悪くなった。
ナルトを重ねて見てしまったからだ。
「?カケルさん、どうしたんですか?顔色が・・・・・・」
「!あ、あぁ・・・何でもない。ちょっと、長期任務で疲れてな・・・」
「長期任務、ですか・・・?」
「あぁ。ちょっと里の外に出てな、一年間かけての任務だったんだ」
少年に腰掛けるように、近くのベンチに移動してポツリポツリと話し始めた。
「そうだな・・・。まぁ、上忍がやるAランクでな、結構骨が折れたぞ・・・」
「そ、そんなにですか・・・?」
「あぁ。Dランクを一日に何百するくらいにな」
例えて言えば少年はまさかの真っ青になってしまった。おいおい、そんなに驚いたらこの先上手くやって行けれないぞ・・・。
「そんなに辛くはなかったさ」
「で、でもやっぱり・・・その・・・」
「・・・・・・」
少年が言いたい事は分かっている。
人の“死”と直面しなければならないのだ。
オレだって、初めての“死”を見たのは波の国だ。再不斬と白はオレが保護しているから違うのだが、オレはガトーとそのた舎弟(?)の死をみたのだ。
忍の“死”は見てはいない。だが、その後の中忍試験やらで見てきたのだ。俺の手が赤く染まるのも見てきたのだ。
「・・・確かに人の“死”を見なくてはならない」
「!」
「だけどな、・・・・・・人は誰かを犠牲にしなくては生きてはいけないんだ・・・。殺さなければ自分が殺される、仲間が殺される。だから、オレ達は殺られる前に殺るんだ」
「・・・・・・」
「今言っても分からないだろうな。もう少ししたら、お前でも分かるさ」
黙りきった少年の頭を撫でて、抱きかかえる。少年は行き成りの事で目を丸くしていた。
「今はまだ殺しの任務は来ないよ。だけど、中忍を目指すのなら覚悟は必要だ」
「覚悟、ですか・・・?」
「そうだ。・・・・・・人を殺す覚悟だ」
「!!」
「人を殺すという事は、その分自分に枷ができる。敵の十字架を背負って生きなければならないんだ。・・・・・・その覚悟が、中忍からは必要なんだ」
「人を殺す、覚悟・・・・・・」
ポツリとオレの言葉を木霊して、少年は視線を落とした。自分の手に向けて。
その後、少し時間が経って少年はオレに視線をよこした。少年の顔には迷いがなかった。
「カケルさん、僕頑張ります!覚悟を持って、僕中忍になることを目指します!」
「!!・・・・・・そうか」
「はい!そして、僕カケルさんのように強い上忍になるように目指します!!」
もう行きますね。とそう言われオレは少年を下ろす。決心が出来たのなら、それでいいんだ。
「無理だけはするなよ?死んだりしたら元もこうもないんだからな」
「はい!!」
笑顔で答えた少年に、オレはもう一度頭を撫でて歩き始めた。少年の気配が遠くなっていったのであっちも歩いたのだろうと感ずく。
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「・・・・・・覚悟、ね」
「!シカマル・・・!!」
少年と別れてからすぐ右に曲がると、そこにはシカマルが壁にすがって立っていた。心臓に悪いじゃねぇかよ・・・。
「あんな餓鬼にそんな話をしてよ・・・。だいぶ参ってんじゃないのか?」
「何にだよ?」
「分かってるくせによォ・・・。ったく、メンドーだな・・・」
「冗談だよ・・・。・・・ま、確かに参ってるよ・・・。この里の男忍と砂の国にはな・・・」
「・・・我愛羅が堕落したんだ、砂の国は安定していない」
「あの我愛羅がか?」
「あぁ。ちょうど、我愛羅が木の葉との同盟で里に来たときに天女とばったり会って、それからよく来ている・・・」
「・・・カンクロウは?」
「カンクロウは問題ない。だから、テマリと一緒に我愛羅の代わりに働いている」
「・・・・・・」
なんていうことだ。どうして、そこまでお前は侵食するんだ・・・。どうして、なんで里を壊滅させようとするんだよ・・・。
「どうしてなんだよ・・・・・・」
最悪な状態だ。可笑しい、可笑しすぎる。たかが小娘一人でなんたる醜態だ。考える事しかできねぇよ・・・。
「くそっ・・・!!」
思い切りシカマルから離れた壁を殴る。そこには、大きく凹んだ場所とひび割れた場所が・・・。
「・・・・・・・・・カケル?」
「!!」
「!!?」
背後、というよりもオレの右側からその声は聞こえた。懐かしくて、久し振りに聞いた声。以前聞いた声よりかは少々低くなっていた。
オレは拳を解いて、オレの名を呼んだ本人のほうに視線を向けた。そこには・・・
「よォ・・・・・・ナルト」
オレの、親友だった。
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