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□uneasiness
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「すき」

「…ああ」

「すき」



さっきから京はずっとこの調子や。

年齢不詳のこの餓鬼は情緒不安定らしい。

俺に抱きついて泣きそうな顔しとる。

こんな状態の奴を突き放す程俺は鬼やないし(多分、そのはず)そのままにさせといた。



「クワバラ、」

「ん?」

「…あんな、っ」



また、泣きそうになっとる。

…いや、泣いとんな。こいつ。

俺の胸板に顔を埋めとるから顔はわからんけどたまに鼻を啜る音が聞こえる。

何かを言おうとしとる京の頭を気休め程度に撫でて、落ち着かせたろうとするとゆっくりと京が顔をあげた。



「…あんな」

「おう」

「好き、やから」

「…」

「好きやから、死なんといて」



顔をあげた京はやっぱり涙で顔を濡らしとった。

水色の前髪が少し濡れとる。



「…おう」

「約束、やからな…っ」

「…約束や」



何時もなら、死ぬわけないやろーっつってどついたるのに。

泣いとる京を見るとると頷くことしか出来んかった。



「クワバラ、好きや…」



俺が頷いたので安心したんか泣きつかれたんかわからんけど、そう呟くと京は眠り始めた。



「…俺も好きやで、京」













(次の日のミッションで京は死んだ)





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