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□春が来た
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寒い冬は嫌いです。
早く来い来い、暖かい春。




「寒い…、あ」


今日も寒くて死にそう、なんて思っていたら白いものが空から降っていた。


「あーあ…凄い積もってる。自転車乗れないじゃん…」


帰りの方法を考えてたら、勢いよく教室のドアが開いた。

入ってきたのは…銀髪で長身の優しい彼。



「お…鳳くん?」
「うわぁっ、南依都ちゃん!」
「なんでいるの?今日は部活ないって言ってたよね」
「あ、うん。音楽室でピアノ弾いてたら雪降ってて…。帰る為に傘、取りに来たんだ」



窓の外を見ればさっきより強く、雪が降っていた。



「南依都ちゃんはどうして教室にいたの?」
「日誌書いたり、教室の整頓してたの…日直だから。」
「そうなんだ。もう帰るよね?」



帰りたいんだけど、こんな雪の中で自転車には乗れない。
それに、歩きたくても傘がない。

…帰れないじゃん。



「あー、えーっと…私自転車登校だから歩いて帰ろうと思ったんだけど、」
「傘がない…、こんなとこ?」
「うん。まさか降るとは思わなかったから…」



そっか、と言って鳳くんは笑いかけてくれた。





「だったらさ、俺の傘に入っていきなよ?」
「えっ!」



突然の鳳くんの言葉は、私の胸をドキドキさせるのには十分すぎて。



「南依都ちゃんに風邪引かれたら困るしね。」
「い…いいよ!鳳くんこそ、レギュラーなのに風邪引いたらよくないっ!」
「風邪なんて大丈夫、そんなに俺弱くないよ。ほらっ、帰ろ!」



鳳くんに押されながら、一緒に外に出た。

相変わらずの雪景色で、玄関のところには小さい雪だるまが2つ、並べられていた。



「あの…ごめんね。」
「俺が言い出したことなんだから気にしないで」



傘の中に誘われ、2人で白い世界に足を踏み入れる。

相変わらず外は寒くて、吐いた息も白かった。



「やっぱ優しいね、鳳くんって。」
「どうでもいい人になんて優しくしないよ、俺。」
「…どういう意味?」



歩いていた足をとめて私のほうを向いた鳳くんの顔が、凄くかっこよかった。



「南依都ちゃんのことが好きってことだよ。」
「……信じちゃうよ?」
「信じてくれないと困るなぁ」



2人で笑って、また白い地面に足跡を残していった。




寒い寒い冬は終わり。
やっときた、暖かい春。





END
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