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□夏、青空、そして君。
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眩しい太陽の光りは今日も降り注いで、地面を熱く焦がし、ムシムシとした空気に包まれる。



「あっつー…」



夏休みの学校へ部活もないのに向かう私は、相も変わらず降り注ぐ熱にやられながらとぼとぼ歩いていた。


私が向かっているのは図書室。


この氷帝学園の図書室は、そこらの図書館に負けないくらい広く、設備も種類も凄まじく整っているから、読書大好きな私にとっては何処よりも暇を潰せて、尚且つ楽しく過ごせる場所なのだ。



「この前借りた作家の本面白かったなー…次は何借りよう…」



そんな独り言を呟きながら歩いていると、近くでビックリするくらい大きな歓声(寧ろ叫び声に近いな…)が聞こえてきた。


なんだなんだと、校舎の角を曲がってみればテニスコート。そして大勢の女生徒。



(あぁ奴らか…)



はぁ…と軽くため息をついた。
歓声の正体は我が学園が誇るテニス部に群がる女生徒。
応援もここまでくると群がると言っても過言ではあるまい。



ウチのテニス部って学園内外問わずファンクラブあるくらい人気だしね。



まぁそんなテニス部御一行様に取り立てて興味もない私は普通にスルーしてその場を通り過ぎる。



「あれ、南依都さん?」


「ん?」



これ以上陽に照らされたら暑さで死ぬわ!


そう思って少し足早にまずは昇降口へ向かっていると聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。



振り向いた先の水呑場にいたのは同じクラスの爽やかイケメンくん。



「おおー、鳳くんじゃないか!」



「こんにちは南依都さん」



軽く手を挙げて挨拶をすると、暑さなんて感じない様な爽やかすぎる笑顔で挨拶を返された。



くわっ…眩しすぎるぜ鳳くん…っ!



手を額に当てながら大袈裟なリアクションをとってみる。
や、ほんと爽やかを絵に描いたような子だね!ちょっと腹黒そうだけど!



半ば失礼な事を一人心の中で呟きながら鳳くんの方へ向きなおす。



「南依都さんは何しに来たの?」


「私?私は図書室へちょっとね」


「あぁ、もしかして本を借りに来たの?教室でよく読書姿を見掛けるけど、夏休みにまで借りにくるなんてよっぽど本が好きなんだね」



少し微笑みながら鳳くんがそう言った。



「そうゆー鳳くんも相変わらずテニス頑張ってるみたいだね〜」



私も鳳くんにそう言うと、お互い様だねと言われてしまった。



「でも久々に会うと、南依都さん何だか少し雰囲気が変わってみえるよ」


「うーんそうかな?別に何も変わってないけど…。鳳くんは少し焼けたよね!」


「俺は毎日テニス三昧だからね。それは仕方ないかな」


「鳳くん元が色白だからあんまり目立たないけどね。いいなー色白」


「男で色白って複雑なんだけどな…」


「気にしてるの?」


「まぁ少しだけ」



少し苦笑しながら答える鳳くんをちょっとだけ可愛いと思ってしまった。



「全然気にすることないって!鳳くん身長高いし外国のモデルさんみたいで凄くカッコイイよ!」



って何言ってんの私!しかも本人目の前にして!


思わず勢いで思った事を口走った私は、自分で言っておきながら顔を赤くした。


鳳くんも少し照れた風に笑う。



「何言ってんだろーね私。まぁ気にしないでねっ」


「あ、待って南依都さん!



じゃ!と照れ隠しに早くその場を立ち去ろうとすると、鳳くんに呼び止められる。



「な、何?」


「俺、今まで色白なの少しコンプレックスだったけどそう言って貰えて嬉しかった!と言うよりどちらかと言えば“南依都さんに“言われたからかな」


「えっ…」


「じゃあ俺部活に戻るからまたね!」


「ちょ、まっ」



待ってと言い終わる前に鳳くんはテニスコートへ駆け戻り、小さくなる後ろ姿を私はあっけにとられながら眺めていた。



なんだかよくわかんないけど心臓うるさい。



体も心なしかほてっている気がするし…。


きっといつまでも太陽の光りを浴びていたせいだろう。うん、そうに違いない。



とっとと上履きに履きかえて、早くクーラーの効いた図書室へ向かえばほてる体も、うるさい心臓もおさまるだろう。



そう思い ながら、確実に鳳が最後に言った言葉を意識してバクバク鳴る心臓をごまかして図書室へ向かった。



とりあえず今、治まったとしても次に鳳くんと会ったらまた胸がざわめくんだろうな…。



そう思いながら着いた図書室で真っ先に手に取ったのは、私にしては珍しい初恋の物語本でした。





。。。end。。。
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