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□彼女の仕事
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私には、大好きな人がいます―…
『長太郎ー今日は中庭で食べよ!』
鳳「うん。いいよ」
鳳長太郎。ここ氷帝テニス部のレギュラーで、テニスは強くて、背が高くて、優しくて、おまけにかっこいい…
そんな彼とは付き合って、もうすぐ三ヶ月になります。
二年生になって、同じクラスになって、隣の席になって…恋をした。
私は、運命だと思うんだよね。…うん。絶対そうだよ!!
私達は昼になると、いつも一緒にお弁当を食べている。
ああ、恋人って感じ!
でも、私にはライバルがいるのです。
(わ、まただ!)
長太郎がお弁当箱のふたを開けた瞬間、すぐに目を奪われる。
今日は…太巻きか。
『…ちょ、長太郎のお母さん、料理上手だよね』
鳳「ああ…母さんの趣味みたいなものだよ。親父の作るののついでらしいけど」
しゅ、趣味?ついで?
恐るべし、長太郎母…!
(すごいなぁ…)
私は料理が大の苦手で、家庭科の成績もいつも悪い。
でも、彼女って言ったら、彼氏のお弁当を作るものなんだよね?
(太巻き、かぁ)
長太郎の口に運ばれていく太巻きが憎らしくて、思わずじっと見ていると、その視線に気付いたのか長太郎と目が合う。
鳳「…南依都、もしかして…」
『え!何?』
鳳「これ、食べたいの?」
キョトンとした表情で、尋ねてくる長太郎。
そう、まずは敵を知らねばいけませんのです!
『じゃ、ください!』
鳳「はい」
ニッコリ笑って、私のお弁当の中に置かれた太巻き。
てっきり、「あーん」って言って食べさせてくれるのかと期待してたのに…っ
物欲しそうに長太郎を見れば、「要らないの?」と不思議そうに聞かれたので、憎らしくも美しい太巻きを勢い良く口に運んだ。
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