あの日見た空。
□Ep-11
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「……棗、入ってもいい?」
【Ep-11 セントラルタウン】
棗の部屋でノックをして棗に訊くと「ん」と一言返ってきた。
「棗。あのさ…」
ベッドに横になっている棗と目が合った。
「この前、ごめん。私…」
「バカ」
「へ?」
俯く私が顔をあげると目の前に棗がいた。
「別に気にしてないから、いい」
「…嘘。
けっこう根に持ってるでしょ?」
長い沈黙が流れた。
「……正直、心がないって言われた時かなりこたえた」
「ごめん。
でも、あの時の流架への態度にはムカついた」
「はっ、謝ってる奴が言う言葉かよ」
人をバカにしたような笑いをする棗。
「それはっ!」
「俺も悪かったよ。
あん時は、お前が校長に接触してたって事に気が回ってて余裕がなかった…」
棗は冷蔵庫から水を取り出して、口に大量に流し込んでいる。
「心配してくれたんだ」
「…うるせー」
棗の態度に自然と笑みがこぼれた。
「…私さ、校長先生に葵に会わせてあげるって言われたの。
それを条件に、自分の側にいろ…だって」
棗は、何も言わずに黙って聞いてくれている。
「でも、断っちゃった。
葵には会いたいと思うけど…あの人の駒になりたくなかったの。ごめんね…」
「…」
「ねぇ、棗…
2年前の火事ってあの人が裏で関わってたんでしょ?」
「っ!?どうして…」
今まで黙っていた棗が口を開いた。
「…調べた」
「調べたって…美羽…お前」
困惑している棗。
「あの時、私が棗と流架について行っても足手まといになるとわかった。
だから…この2年間、アリス学園を徹底して調べたの」
私は、棗を見据える。
「あの火事の事は、学園に来てからわかったの。
ある人から、聞いた…」
「ある人…?」
「名前は言えない。
けど…敵じゃない」
「なんだよ、それ…」
「私ね…葵の居場所がわかったの。
だから、棗に言わなきゃって…」
葵の名前に反応した棗。
「…花姫殿。中等部校長のひざ元にいる」
「…確かだな」
「うん。けど…今は行動に移さないで。
今の棗は、初等部校長に見張られてる。この状況では、無理だよ」
「でも!」
悔しいのか唇を噛む棗。
「私がなんとかする。チャンスがいつか巡ってくるはずだから…私、棗の自由を願ってるから」
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