無双

□恋実り花結び
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《恋実り花結び》




 出雲大社の本殿に、一年に一度だけ咲く花がある。
 その花を好いた相手と共に手に入れると、一生離れず共にいる事が出来るという。
 その花を巡る、浅井夫婦とその他の欲深い者たちによる争奪戦は、浅井夫婦が勝ったものの長政が転んで花を台無しにしてしまうと言う結果に終わった。
 花がなくても、お互いがお互いを思い共にあろうとすることが大事だと浅井夫婦の綺麗な締めで幕をとじた。
 妻……と言うより同胞といった方がしっくりくる立花夫妻も参戦したが、浅井夫婦についた阿国と芙蓉により即座に戦線から離脱した。
 ぎん千代に、あの花が欲しかったのか?と問えば、あの花を乾燥させて作ったお守りを自分と元就にやるつもりだった。と返された。

「元就には長く健康でいてもらいたい、貴様は殺しても死にそうにないから、人身御供にちょうどいい」

 その知識は、何処からもたらされたか聞くと、佐和山のお狐様の名が出てきた。
 多分、以前四月馬鹿節のとき正則を焚き付けて悪戯をしたしかえしだろう。
 しかし、仮にも自分の夫に『殺しても死にそうにない』は酷いだろう。
 本当の事を言ったまでだ。
 そう、すげなく返された。

「安心しろ、元就もそう思っているはずだ」
「だとしたら、酷い言われようだな」
「本当のことだ、何度も言わせるな」

 花を手に入れられず機嫌が悪いのか、はたまたただ口調が何時もより辛辣なのか、ぎん千代の言葉はきつい。
 喧嘩はあきまへん、そこに気の抜けるような女性の声がしたと思ったら、ぎん千代に人影が飛びついた。
 ぎん千代様、綺麗なお顔が台無しやわぁ、笑っておくれやすと、阿国が人の良さそうな怪しい笑みを浮かべている。
 何をするつもりかと、ぎん千代が聞くと、阿国はクスッと笑った。

「お話は聞かせてもらいました」
「なんだ?」
「お守りなら、いくらでもありますからお買いになりますか?」

 阿国殿は本当に商売上手だ。宗茂とぎん千代は顔を見合わせた。



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