無双
□帰らずの雨
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《帰らずの雨》
宗茂が毛利元就の屋敷に来て、本日で四日連続で雨模様。
庭に咲く手鞠花の葉の上で、気持ち良さそうに水浴びを楽しむ蛙たちは良いだろうが、元就としては速くやんでほしくて仕方がない。
梅雨入りして間もないのだから、長雨は仕方ないだろうが、城下の……特に、川などの水場の様子や作物のでき具合に山の様子が気になることと……
「元就公、構ってください」
やることがなくて退屈なのか、背後から自分に抱きついてくる宗茂をなんとかしたい気持ちでいっぱいになる。
さっさと帰れとは言わない。
元就も、大好きな宗茂が側にいてくれたらそれはそれで良いのだが、梅雨入りし湿気で少し不快感を感じているときに、抱きつかれるとうっとおしく感じてしまう。
しかも、肩口に顔を埋めたりしてくるためたちが悪い。
「……宗茂」
「なんでしょう、元就公」
書けない。と呟くも、宗茂は聞く耳持たず。
抱きついたまま離れようとはしない。
気づくと、膝の上の三毛猫も丸くなり寝息をたてている。
それを見てかわからないが、宗茂は猫みたいだねと頭を優しく撫でてやる。
「俺はガキじゃありません」
そう言うやいなや、彼は不意打ちで唇に触れるだけの口づけをしてきた。
「まだ、帰りたくないんです」
「また、ギン千代に怒られるような事をしたのかい?」
情けない声を出す宗茂に優しく聞くと、表情を変えずに理由を話し出した。
「統増(むねます)にお金を借りて、茶器を買ったんです」
ばれたら、確実に殺されます。
だろうねと相槌を打てば、華麗な顔を更に情けない表情にさせる。
元就は思った。
もしかして、この雨は宗茂が降らせているのか?と。
「元就公、大好きです」
「うん、知ってる」
「だから、もう少しの間だけ私を匿って下さい」
「うん、雨の間だけね」
なら、雨が降り続けるようお願いしないと。と笑う宗茂に、やっぱり君のせいで雨が降ってるのかな?
そんなことを考えながら、また著作に励もうとした。しかし、宗茂の体温が気になるのか、うっとおしいのか解らないが気が散って続きを綴る事が出来なかった。
20110510
書き直し、これにて終了!
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