無双
□パンドラ☆ボックス
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ずっと気になって、気になって仕方ない事があります。
《パンドラ☆ボックス》
元就公、酷く真剣な顔で元就を見つめる宗茂に、見つめられた本人は「照れるから、止めてくれないか?」と髪をかきつつフニャッと笑っていた。
その光景を見ながら、呆れ果てるのは一応宗茂の友人の加藤清正。
元々、頭のネジが五、六本何処かに抜け落ちた残念な男だと思っていたが、今日は特に酷い。
間違いなく、主君の秀吉よりも年上なうえ、ひ孫がいる元就にデレデレな上に、おぞましいほど爽やかな笑みを浮かべている。
清正の経験上、この笑みを浮かべているときの宗茂とは関わりたくない。
何故なら、必ずトラブルに巻き込まれるからだ。
清正が身の危険を感じ、退室するか否かを本気で悩んでいる事など気にもとめず、宗茂は元就の両手を己の手で包む。
「元就公」
「だから、なんだい宗茂」
宗茂が、元就のぼんやりした顔に己の顔を近づける。
互いの息づかいが分かる距離まで近づき、もうすぐ唇がくっつきそうになり、あわてて清正は宗茂を横から蹴り飛ばした。
「なに、頭腐ったことしてんだこの馬鹿」
「嫉妬か清正」
「訳わかんねぇ事ぬかしてないで、元就様に謝れ、今すぐ謝れ、切腹はしなくていいから取りあえず地に這いつくばって謝れこのカス」
「悪いね、清正。おかげで助かったよ」
のんびりと、今の事などどこ吹く風と受け流す元就の声に、少し不安になるも、あまり動じてない姿にやはり年の功かと思った。
清正の知る限り、元就があわてふためく姿は見たことがない。
宗茂にからかわれ、頬を赤くする場面を目撃したことは何度かあるが、それでも、我を忘れてとかそういう事はない。
同じ年上で、元就同様年齢不詳な豊臣軍の軍師、竹中半兵衛も得体がしれないが、それでもここまで達観した大人ではない。
「元就様は、秀吉様より年上なのですよね」
不意に気になり、口にしてみると元就は「そうだねぇ〜」と呑気に答える。
「なら、家康様より年上」
「まぁ、当たり前だよね。たしか秀吉公より家康公のほうが何歳か若いからね」
「……光秀より年上って訳じゃないですよね」
「目上の人に対して呼び捨てはいけないよ。」
彼も、五十の大台を超えてるんだからと笑顔で言われ、そう言えば見た目は若いけど、結構年いっていたんだと思い出した。
「ちなみに、濃姫は一番上の息子よりも若いかな」
―鬼柴田よりも上だな。確実に。
清正は、心の中で呟いた。
その隣で首筋を擦りながら、宗茂が「父上や道雪様より年上だ」とつけたす。
「いったい幾つなんですか?」
「うぅん、聞きたい?」
口許に指をあて、クスッと笑う元就の仕草に顔を赤くする宗茂を無視し、清正は好奇心に負け聞きたいと告げる。
なら、教えてあげるよと手招きされる。
すぐそばに行くと、座れと言われたため隣に座ると耳打ちされる。
『間』
「本当ですか?」
「うん」
クススと悪戯を成功させた子供の様に笑う元就を見、清正は口許をヒクヒクと震わせる。
その後ろで、宗茂が何て言われたんだと聞いてくる。
目が笑ってない。
「取りあえず宗茂」
「なんだ清正?」
『相当な年上好きだな』
『違うぞ清正、元就公だからいいんだ』
『やっぱりお前、頭沸いてるだろ』
20110516
無双の中ではどうか知りませんが、史実だと関ヶ原の時点で百歳オーバーだそうです。