無双

□愛しい貴方に口づけを
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 口づけるその度に……


《愛しい貴方に口づけを》



 口づけをするとき、いつも彼は困ったような顔をする。
 困り果てた顔は可愛いが、やはり優しく笑っていてくれた方が良い。


「何だか、最近自分が怖いよ」


 口づけをしたあと、垂れた眉を八の字にし困り果てた顔をする元就に、宗茂は何故ですか?と優しい声音で問う。
 すると、更に困ったと言いたげな顔になり、元就はそっぽを向く。


「いってもらわなくては、わかりません」
「言いたくないよ、君を調子づかせそうで」
「私が調子にのるような事ですか?」

 それは嬉しいですね、と笑うと、元就は更に眉を垂らす。
 その姿すら愛しくなり、元就の額に優しく口づける。


「君は、こういう事を平気でするよね」
「えぇ、元就公が可愛らしい事をするからつい」

 私は恥ずかしくて、そう容易くはできないよ。ぼやく元就の顔はどこか紅く、可愛らしい。
 今度は頬に口づけをすれば、更に紅くなる。
 本当に、可愛らしい人だなと腕の中におさめれば、元就は宗茂にされるがままに彼に身を預ける。

「で、なにが怖いのですか?」
「……」
 いっていただけないのなら、このままですよと言わんばかりの笑顔を胸の中から覗き、深いため息を吐く。
 こうなったら、宗茂は頑として譲らない。元就は言わざるおえないと諦めるしかなかった。

「君と口付けを交わすことに慣れてきていること」
「そんなことですか?」

 宗茂の物言いに、元就は眉をよせる。
 宗茂にとってはそうかもしれないが、されることに慣れてない側からすると大変なんだ。
 そう言えば、宗茂は可笑しそうに笑った。

「だから、貴方はとても可愛いんです」
「……」

 年上で、普段なら宗茂を良いように扱えるのに、こう言うときだけは彼に負けてしまう自分に少し泣けてきた元就は、気にしないでくれと言うと彼の胸に顔を埋める。
 今の顔は、絶対に見られたくない。
 しかし、両頬に手を添え、宗茂はそっと元就の顔を自分の方に向けさせると唇にそっと自分の唇を重ねた。
 触れるだけなのに、酷く心がざわつく。

「なら、もっと慣れていただきたいですね」

 解放され、意地悪く笑う宗茂の鼻を摘まみ、今度は元就から口付けをする。
 やっぱり、慣れないともらす元就の行動に、今度は宗茂が驚いた様だった。

「もう一回、お願いします」



 その後、もう一度貴方から口付けをしてくださいとせがむ宗茂に、元就は仕方ないと口付ける。
 口付けを交わし、やはり慣れない事はするべきじゃないと元就はもらした。
 それは、ある平和な日の事だった。






20110523




 キスの日なので、キスの話を。
 私も、キスシーン書くのは未だに慣れません! お粗末様でした。







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