06/23の日記

21:27
誕生日の前の日(け)
---------------
 明日は君の生まれた日

誕生日の前の日


 清正がクリーニング店を継いで一年近くたつ。
 養父母の経営する建設業の手伝いも未だに続けているらしく、いない時もままある。
 そう言うときは、同じ横丁の住人で暇な人間が受け取ったりしている。
 さて、ところ変わって六花堂。
 風見鶏の店主、仲代風水は、定休日を良いことに、親友の六花堂の店に入り浸る事が多い。
 今日も、スケッチブックを片手に六花堂に入り浸っている。

「学ぅ〜、マンゴーティー一杯」
「六花堂です」

 本名を呼ばれ、少しムッとする六花堂こと雪光学に気にするなと笑い、テーブルに並べた色鉛筆で手にしたスケッチブックに絵を書いていく。
 ちらりと覗くとソコには無数の虎のイラストが……

「なんですか、それ」
「誕生日ケーキに乗せる、マジパンのイメージイラスト。
 今回は、虎のマジパンをつけて欲しいって言われたから」
「子供用ですか?」

 小さなお子様向けに、マジパンを手作りすることもある風水は、友人の子供の為に豹を作った過去がある。
 また、子供用だろうと雪光はふんで彼女の聞いたが、風水は笑顔で良く知る人物の名を口にした。

「清正の」
「清正とは、クリーニング屋の加藤清正君の事ですか?」
「うん」

 雪光の記憶が正しければ、彼は自分の一つ下。
 立派な成人男性のはずだ。

「さすがに、マジパンは……」
「清正のお母さんから頼まれた」

 清正の養母は、良く横丁に現れているため雪光も勿論知っている。
 小柄な可愛らしい人だ。
 ただ、雪光は苦手な義姉を更にお節介にしたねねが少し苦手だが、母性溢れる頼もしい母親だとは思っている。
 しかし……、成人男性の誕生日に可愛らしい虎のマジパンとは……

「母の愛は、幾つになっても変わらないってこう言う事かな?」

 良いよね、と無邪気に笑いスラスラと書き上げていく風水に、苦笑いを浮かべ、そうですねと言った。

「いつ、納品ですか?」
「明日」

 明日ですか、そう呟いて雪光は溜め息を吐いた。
 明日、ケーキを受け取って、ものすごく微妙な顔をするだろう清正を想像して。




 明日に続きます。
 おねね様なら、マジパン付きケーキを頼みそう。






次へ

日記を書き直す
この日記を削除

[戻る]



©フォレストページ