06/24の日記

15:33
虎のマジパン(け)
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《虎のマジパン》




 清正は幼い頃から故あって実の両親ではなく、養父母の豊臣夫妻に育てられた。
 同時期に同居していた者たちと兄弟の様に育ったが、ある行き違いが原因でバラバラになったが、清正と彼の弟分の福島正則は豊臣夫妻と関係は継続している。
 時折、義母のねねは現れては清正の部屋を掃除したり、洗濯をして帰っていく。
 横丁の住人たちにも世話を妬くこともあり、大半の者が良くも悪くも彼女の事を知っている。
 清正はそんな養母のねねを、酷くしたっている。
 「初恋はおねね様だろ?」と親友の宗茂に言われて、顔を真っ赤にし照れながら「違う」否定をするくらいだ。
 彼の前でねねを呼び捨てにした男が、清正に殴られそうになったと言う噂まである。

 一通り仕事を終え、店じまいにしようとした頃、ねねは見慣れた箱を持って現れた。
 部屋に入り、彼女に何かあったのかと聞くと、今日は自分の誕生日だと言うことを言われ漸く思い出した。
 豊臣夫妻と暮らしていた頃は、毎年各々の誕生日をみんなで祝ってた。
 ふと、その事を思い出し、清正は少し寂しくなった。

「清正、はいこれ」

 誕生日おめでとう、そう言って渡されたのは、すぐ近くに店を構える風見鶏のロゴの入った箱と、包装紙に包まれたプレゼント。
 あけると、エプロンと虎のマジパンが乗ったショートケーキがでてきた。
 エプロンは手作りらしく、広げると胸の所に円の中にデフォルメされた可愛らしい虎の刺繍が施されていた。
 間違いなく、ねねがこの日のために作ってくれたものだろう。

「ほら、お店ようのエプロン無かったでしょ」

 遅くなってごめんねと笑うねねの姿が、可愛らしくていとおしく、顔が異常に暑くなる。
 鏡が無くても、いま自分の顔が赤く染まって居るとわかる。
 清正の異変に気づいたのか、ねねは清正の額に自分の額をあて、熱がないか確認する。
 息づかいが肌に感じる距離を変に意識してし、清正は、目のやりどころに困るやら、心臓が異常な早さで動き、頭の中が白くなっていくのをかんじた。
 落ち着け自分、と少し視線を外すとケーキの上の虎と目があった。
 憎らしいほどにんまりと、マジパンの虎は笑っていた。





 誕生日おめでとう、清正。
 そして、いつも雑に扱ってごめんね。

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