12/24の日記

23:35
クリスマス当日A
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《クリーニング屋と生人形》

―清正さんは、ねねさんたちとクリスマスを過ごすんでしょ。
―絶対にそうよ、そうに決まってるわ。

 ねぇ〜と声をあわせる、珍しくアンティークドレスを着た二人の少女に、清正は頼むから帰ってくれと疲れた溜め息をついた。
 その声から、疲れを察し心配そうに顔を覗く貞子。
 その隣で花子は、大丈夫よと呆れていた。
 いや、呆れたいのはこっちの方だと言えば、あら、そうかしら?と花子は眉を寄せる。

―宗茂さんの事を心配してるんでしょ。
―大丈夫よ、宗茂さんはいい加減に見えるけど、気遣いのできる良い方よ。
―それに、落ち込んでるときの回復の仕方もよくわかってるわ、大丈夫よ。

 貞子も花子も見た目よりも長い時間を生きている。もちろん、清正よりも。
 助言もわからなくもないが、親友として付き合った時間が長く、そのなかでも一、二を争うぼんやり具合にこれはまずいと本気で思った。
 だから心配なのだ、自分が協力出来るのなら力になりたい。それを阻まれたり、無駄だと言うような事を言われたら腹が立つのは当たり前だ。
 その辺りも気づいてるのか、はたまた清正がわかりやすいタイプのたも察したのかわからないが、花子も貞子も一生懸命腕を伸ばして清正の腕を撫でた。

―どんと余裕を見せないと。
―沈んだ怖い顔をしてルと、相談したくてもできないでしょ。

 ね、そう言われ清正も少し余裕を持たねばという気になった。
 それもそうだ、どんなに相談して欲しくても此方が構えてたら話したい事も話せなくなる。

―お前ら……

 じんと鼻の奥がツンとなった。

《たこ焼き》
 六花堂で、蔵ノ介は息子の金太郎と一緒にお茶をしていた。
 蔵ノ介の方には、風見鶏のクリスマスケーキと、大きな買い物袋が二つ。その中には、クリスマスだというのに、たこ焼きの材料が入っていた。
 父が居る時は、たこ焼きをするのが決まりだ。
 金太郎の方には、叔母と叔父から貰ったクリスマスプレゼントがある。
 叔母のはじめからは、豹柄のポンチョ。叔父の貞治からは手作りの特性ドリンク(瓶詰め)を貰った。
 ドリンクは、帰ってくる父親…送り主の兄に飲ませて、あまりであるかない様に灸を据えるための物らしい。

―金太

 呼ばれて振り向くと、父の姿があった。
 サンタが叶えてくれたんだ。
 無性に嬉しくなって、金太郎は父に飛び付き満面の笑みで言った。

『お帰りなさい』

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21:28
クリスマス当日@
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《クリスマスケーキ戦線異常あり?》


 その日、開店時から風見鶏は戦場だった。
 厨房もホールも休日であることも手伝ってひっきりなしに押し寄せる客の対応に追われていた。
 厨房は風水が、ホールは小夜がそれぞれ指示を出している。

―店長、ブッシュ・ド・ノエルとスノードームの追加をお願いします。
―予約の諸葛さん、予約より一時間遅く取りに来ると電話がありました。
―休憩有難うございましたなのじゃ。
―赤い服きた変な人がただでケーキを寄越せっていってます。あっ宇宙海賊とか言ってますがどうしますか?
―あぁ〜、佐竹さん、ケーキできたやつを運んで、諸葛さんの分は名札つけたまま奥の分かりやすいところに置いといてね。甲斐とくのいちは間見て休憩行ってね。宇宙海賊だろうが戦隊だろうが正義の味方だろうが金がなけりゃ何があってもケーキは渡すなよ。

 手際よく指示を出し、厨房内で仕事をしていたバイト中の二人程に声をかけ休憩に行かせ、生クリームを泡立てる。
 洋菓子店にとってクリスマスは一年で最大の稼ぎ時、店の運営の是非も問われるものになってしまう。
 だから風水は、いつも以上に真剣なのだ。

―風水さん、ヘルプにきました

 宍戸が一足に店に来た。
 夜は恋人と過ごすため店をはじめに任せて、先に手伝いに来てくれたそうだ。

―わりいな、店は大丈夫なのか?
―今日は客も少ないし、はじめがいますから。

 だから気にするなと言う宍戸の言葉に甘えさせて貰うことにした風水は、ホールの小夜と変わるよう頼んだ。
 ただいま午後一時少し前、これからクリスマスケーキ戦線は此からが本番だ。


《永久より君に》

 正午過ぎ、仮眠から目覚めた千石は身支度を済ませ勤め先であるホテルに向かう。
 某アイドル演歌歌手のクリスマスディナーショーの前座でマジックをすることになっていた。

―んじゃ、おっしー行ってくるね。
―あぁ、きばってこいやぁ〜

 挨拶を交わし、外に出ると奇妙な二人連れに捕まった。
 一人は明らかにコスプレにしか見えない紅いジャケットの男、もう一人は首に灰色のスカーフを結んだ男。
 スカーフの男から、風水に渡して欲しいと綺麗にラッピングされた紙袋を渡された。
 知り合いかときけば、ただ渡す分でいいと言われた。
 そう言ってさって行った二人の男を見送り、紙袋を見た。
 紙袋には、ただ『風水へ』と書かれたカードがぶら下がっていた。

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