12/27の日記
23:48
永久より君に
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六花堂で弥勒が物騒な事を吠えていた。
「寝落ちで襲い損なうとは……宗よ、神の与えしチャンスを棒に振るとは、貴様は正気か」
「だからどうして知ってるんですか?」
「朝帰り現場を目撃したからだ、張ってて良かった!」
「大家さん、ここに犯罪者がいますよ」
どうやら、ネタを仕入れるために宗茂の店のまえで張っていたらしい。
………いっそ捕まってしまえと心のなかで呟くと、風水はクリスマスの夜に千石から渡された紙袋をのぞく。
紙袋を受け取ったとき、千石から送り主の特徴を聞いたとき、風水に思い当たる人物は居なかった。
これを送り主に還そうにも何処にいるのか解らないため、どうにもならない。
箱は開けていない。
ただ、そこに挟まれたクリスマスカードに書かれた文字には見覚えがあった。
しかし、風水の知る限りこのカードが此処に有る事はあり得ないはずだ。
風水に家族は居ない。
それどころか、日本人でない風水は、戦争真っ只中のとある国で生まれ育った。
戦争で親類を全て失った風水は、日本人の仲代壬琴という医師の元に身を寄せその際に、彼と養子縁組みをした。
愛されていたとか、そう言うことはわからないが、風水は彼と彼と共に暮らす白羽を慕っていた。
そんな彼らも、冬の寒い日に黄泉路を降った。
クリスマスカードの文字はその壬琴の物だった。
あるはずの無いカード。
風水の親友で、同じように壬琴の世話になった、全国展開するカレーチェーン恐竜屋の社長、通称ヤツデに電話をし確認したところヤツデにもそれは届いたらしい。
来年、十回忌を迎える。そんなおりの奇怪なプレゼントに、二人で何が起こったのか不思議だと話をした。
ヤツデはプレゼントを開けたらしく、中にはダーツが入っていたらしい。
そう言えば、ヤツデは壬琴らと良くダーツをしていた。
中には『頑張れ』と書かれたカードが入っていたという。
―なぁ、ヤツデ。
―なんだ?
―壬琴さんが、こういうことすると思うか?
―いや、天変地異が起こるかと思った。
性格は、お世辞にも良いとは言えない男だった彼らの事を思い出し、首を横に振るしかなかった。
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