12/28の日記

22:52
苦餅?福餅?
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 昔から29日につく餅は『苦餅』と言って嫌がられる。
 特にお年寄りからはその話が持ち上がりとても嫌がる。
 で、今年の商店街の餅つき大会は30日。
 大安吉日、苦餅にならず尚且つクリスマス以降で一夜飾りにならない。その条件をクリアする日が30日だけなのだ。
 見てくれが良くて脱いでも凄い。
 そういう理由で、体格がいい清正と宗茂が餅つきのつき手に抜擢された。
 ……というか、雪光が商店街のおば様たちに押しきられたと言うのが本当の所だが……。

―取りあえず、当日脱ぐという方向で。
―それだと大家さん、俺も清正も風邪を引きます。

 そこ?突っ込むところソコ?お前バカだろと宗茂の胸ぐらを掴み前後に激しく震う。
 宗茂はハハハと笑う分でやる気満々のようだ。

―ダメなの?清正くん?
―ダメなのじゃなくて、死ぬぞ普通。あれか、死刑宣告か?
―清正くん、銀さんっぽいしゃべり方ですね。
―いや雪光、あれは坂田銀時といいより眼鏡の……
―とにかく、俺はやらんぞ。

 誰がやるかと怒る清正に、雪光は穏やかに笑みを浮かべ、全く困ったと思ってない声音で『困りましたねぇ〜』頬に手を添えた。

―千石君と忍足君は貧弱だし、肩を壊した手塚君にやれと?

 殺意の籠った視線が清正に突き刺さる、見ると深司が無表情に冷たい視線を此方に向けている。
 ここで手塚にやれと言ったら、殺されかねない。
 明後日の方向を見ていた雪光がそのままの姿勢でチラリと此方をみる。

―それに、ねねさんに餅つきやるって言っちゃったんですよね……

 楽しみにしてたのに、残念てすね。ととても残念そうに言う。
 雪光はもう一度チラリと清正を見る。
 ねねの名を出しただけでたじろいでいる
 もう一押しとばかりに、変更になったことをねねに伝えるといい携帯を懐から出す。
 かけようとしたところで、清正が動いた。

―やります、やらせていただきます。

 その笑みは、常時よりやや勝ち誇って見えたと住人たちは思ったという。




―で、雪光。いったいいくら包んでもらったんだ?
―また、なんでそんな話を?
―いくらだ。

 雪光はなにも言わずにふふふと微笑んだ。


―女の笑顔は恐ろしい……、その時手塚は本気で思ったとか。

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00:35
永久より君に
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 お昼過ぎ、今日はケーキを13個も予約してくれた客が居るため、それを用意し店のカウンターでガラスケースを拭いていた。
 扉が開く、ボーダーのシャツに桜鼠のコートをきた男が入ってきた。
 明るい茶の髪に元気と言う言葉をそのまま形にしたような男、そう言えば千石が言ってたプレゼントの男と幾つか特徴が合致するな。
 そんなことを考えながら、男の様子を見ていた。
 男はまっすぐに風水の方まで来ると、『予約をいれていたものですが……』といった。

―はい、ご予約いただいたケーキです。

 男が頼んだのは、ホワイトチョコとフランボワーズのケーキだ。
 チョコの甘さとフランボワーズの酸味とが絶妙にあわさった美味しいケーキだ。
 男にケーキを渡すと、ふと風水の胸元を見て残念そうに眉を下げる。

―あぁ、やっぱり……

 ポツリと漏れた男の言葉に、風水は直ぐに男に紙袋を見せた。

―これ、貴方が下さった者ですよね。
―え、えぇ

 やはり、紙袋はこの男からのようだ。
 風水は男に紙袋を渡すと持ち帰って欲しいといい、それを貰うことを拒否した。

―頼まれものなので困ります。受け取って下さい。
―だれから頼まれたのかわからないけど、これは受けとりません。

 風水は頑なに拒んだ。男が、何を言っても信じる事はなく持ち帰って欲しいと頼んだ。
 9年だ、彼らが死んで9年たつ。
 彼らへの様々な感情と折り合いをつけるのに、かなりの時間をついやした。
 それを今さら……、何を言っても拒む風水の姿に、男が何を思ったのかプレゼントをガラスケースの上にのせると、『自分からのプレゼントにしてほしい』と言った。

―それなら、受け取ってくれますか?なにが何でも、貴方に貰っていただきたいんです。
―でも

 戸惑う風水を他所に、男はじゃあと帰っていった。
 彼処まで言うのだから、貰って良いだろう、そう判断し風水はプレゼントの封を開けた。
 中には、青い石が飾られたネクタイピンがあった。
 そして、もう一枚カードが入っていてそこには懐かしい文字でひと言『頑張れ』の文字が書いてあった。










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