12/29の日記

22:09
大掃除です、六花堂
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 『地上の天外魔境』の異名を密やかに持ち合わせる閑古鳥の住処、六花堂。
 店主の雪光学は、見た目は真面目なおっとりとした常識人だが、彼女は残念ながら幼い頃から勉強しかしてこなかった。
 それゆえか、人の常識はあれど一般常識は壊滅的と言って良いかもしれない。
 ちなみに、骨董品を買い取る際は『曰く付き』や『ロマン』を中心に決める。
 うん、閑古鳥の巣窟だと言う理由がよくわかる。
 しかも引きが強くどうにも厄介な代物を買い取ってしまう。
 故に、『まずいもの』があるし『呪い』の品もいくつかある。

 さて、そんな六花堂も大掃除をすることになりました。

―姉貴、この壺は大丈夫なんだろうな?

 学を『姉』と呼ぶ柄の悪い男が店内から現れた。手には金魚が泳ぐ白磁の壺を持っていた。
 黄緑に髪を染めた男は、頬に傷がある。目付きは鋭く見るからにがらが悪そう。

―大丈夫ですよ、それは。

 さっきのは怪しかったですけど……とクスクス笑う雪光を見て、ギョッとする。
 何時もより三割ほど楽しそうに笑う雪光に、男はなにか言いたげに見ている。
 雪光には腹違いの兄一人、弟が二人いる。しかも、全員名字が違う。
 複雑怪奇の家族関係のためあまり口にしないが、兄弟なかはそこそこ良いらしい。

―楽しそうだな。
―うん、凄くたのしそうだね。

 目の前で展開される兄弟のほほえましいやり取りに、手塚も深司も呆れ眼で見ていた。
 他の店も店が終われば大掃除をする。
 先に大掃除を済ませ、他の店の手伝いをするために、早めに掃除をするのだが、六花堂はもう少しかかりそうだ。

―あっ、それはまずいです。
―先に言え。こら。
―うふふふふ










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