02/12の日記

15:14
僕の初恋を貴方に捧ぐ
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(1)

 時遡ること数年前、まだ清正が高校生の頃。
 その当時、清正の両親は海外出張中で豊臣家に居候をしていた。
 女にはだらしないがしっかりものの秀吉に優しい母親がわりのねね、同じく居候をしていた同じ年の福島正則や、一つ年上の石田三成と喧嘩をしながらもそれなりに巧くやっていた。
 朝、時計の音と共に無数の足音が家の中をけたたましく移動する。
 人よりも低血圧にも関わらず意地と根性で早く起きた三成は、ひと足先に朝食を食べていた。

―さっさと朝食をとれ、片付かんだろ。

 低血圧のため、不機嫌度当社比三割増しの人を殺しそうな視線で秀吉達を睨み付ける。

―はぁ、頭でっかちが……

 噛みつく正則を他所に、三成は秀吉の分の朝食を用意しる。

―どうぞ、秀吉様。

 俺は行きますからと食器を流しに入れると、三成はそのまま家を出た。

―あいつ……
―まぁ、三成はしっかりしすぎてるから〜

 清正はいつも一番最後に朝食の席につく。
 おはようございますと挨拶し席につくと、正則と一緒にねねが清正に朝食を用意する。

―三成のやつまたか……
―まぁ、あのこはああいう性分だからね。

 困った子だよ、ホントに。苦笑しながらご飯をつけるねねに、清正も無言で同意した。
 こういう時、清正は三成が羨ましいと思ってしまう時がある。
 同じ『人付き合いが得意でない』としても、三成と清正では明らかな違いがある。
 あまり人から誤解を受けづ、大概は円滑な人間関係を築く事の出来る清正とは違い、三成は口が巧くない上に物言いがあまり良くない、人見知りも多少混じって誤解されて人間関係を巧く作れない三成。
 ねねは三成を酷く心配している。
 清正からすると、それがあまり面白くなかった。
 ねねに迷惑を掛けることは清正にとってあってはならない事だが、ああやって心配される事が少し羨ましいと思ってしまう事もある。

―本当に、もう少し清正みたいにてがかからなければ良いのにね。

 いい子、いい子とねねは清正の頭をなでる。
 顔が赤くなる。
 ねねの優しいその手から伝わる仄かな暖かさに、清正はなんとも言えない気持ちになった。
 胸の奧がちくりと痛み、清正は自分がどういう顔をして良いのかわからなくなった。

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