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□うるさい、黙れ
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「七海。七海」


彼の声はとても落ち着く。
私の安らぎの一つになっていることだろう。でも、名残惜しいが甘い時間は終わりだ。
ぱちりと瞼を上げると、すぐ真上に彼の綺麗な顔が視界に入る。


「七海。起きろ」

「…むにゃ、…へへ。おはよ、勇」


勇、と呼ばれた事に満足したのか「おはよ、」と笑いながら私の頬を撫でる。
男らしいしっかりとした手。ああ、私は愛されている。
そう、実感した。


「勇。今日も大学の講義受けるの?」

「当たり前だ、単位は取らなきゃいけないからな」

「じゃあ私も行かなきゃ」


むくり、とだるい体を持ち上げるとそのままクローゼットに向かう。
今日は何を着ようか。…うーん、どうしよう。


「俺、これ要望」

「…ワンピース?」

「だって、お前に似合うじゃん…俺ワンピース好きだし」


拒否する理由もないのでワンピースに何かを羽織るようなスタイルにした。
今日はぽかぽかといい天気だし、春だから薄着でも大丈夫だろう。よし、決めた。


「同棲生活1ヶ月ー♪」

「大声でいうなよ七海。ったく、恥ずかしい…」

「あははは♪」


とても楽しい。
そんな日常に、彼がいなくなったらどうなることだろう。
きっと、歯車が噛み合わないような違和感に襲われるのだろうか?


そんなのは考えたくない。
嗚呼、至福だ。今は、何もかも。





さて、昨日は私が寝坊してしまったが、今日は勇が寝坊する番らしい。
ぐーすかと眠りこけ、ちょっとやそっとの騒ぎでは起きそうになさそうだが、少し声を張り上げ彼を起こす。


「勇っ!」

「…ん…」

「勇ってば!起きて!」


今日の勇は寝坊すけだ。まだ虚ろな目をしている。
私はめげずに声をかけ続ける。なのに勇は起きる動作も無く、ごろりと転がっただけ。


「ゆーうー」

「ななみ。うるさい。あと、さ」

「あと?」

「お前、もうちょっとこっち来い」


言われるがままに彼にもっと近づいた。
瞬間、布団から手を伸ばされて頭を思いっきり引き寄せられた。


「きゃ…」

「かかったな」


そうして、彼は悪戯っぽくキスをしてくるんだ。




うるさい、黙れ
(……ねぇ、勇)
(何だ?)
(反則技は卑怯だ、ばか!)


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あとがき。
ドリーマンの法則様提出。
楽しく書かせて頂きました。
いやぁ、楽しい。

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