拍手など

□人類最強のメイドは、地上最強!
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「とりあえず、俺の屋敷から出て行け」

「このままの状態で出て行ってもよろしいのでしょうか?」


あまりにも暴れて、話さえも聞いてくれる様子ではなかったので。
現在、リヴァイ様は椅子の脚に両足を縛り。
両手を使えないように後ろ手に腕を組ませて肘と手首を固定しております。
全く、身動きが取れない状態で放置していいものかと問いかければ、返ってきたのは舌打ちでした。


「話だけでも聞いて欲しいのですが・・・」

「はっ!テメェの話を聞いてやるほど優しくは「私、バイエルン家でメイドをしていた者です」」


遮るように話し出すと、ついに観念したのか睨み付けたまま口を閉じてくださいました。
聞く聞かないはどちらでもかまいません。
けれども私は話さなくてはならないのです。


「私は、リヴァイ様に出て行けと言われても出て行くわけにはいかないのです。
 ・・・・それが、お嬢様とのお約束ですから」


私のお嬢様はそれは素晴らしい方なのです。
地下街から私を救い出したばかりか、メイドとして厳しくも優しく躾けてくださいました。
そんなお嬢様がある時、唐突に言い出したのです。


『なんか・・・アンタを虐めるのにも飽きたわ。
 そうね・・・調査兵団にでも入って、巨人達を痛めつけるのも楽しそうね』


お嬢様は有言実行される方です。
ご両親や親戚総出で止められたというのに、訓練兵団に入隊されました。

そこから、私にとっては地獄の日々。
毎日、私を厳しく躾けてくださったお嬢様と離ればなれ。
美しくも気高くもないお嬢様のご両親に使える日々・・・。

失礼、話がそれてしまいました。
お嬢様は訓練兵として優秀な成績を収めました。
希望通り、調査兵団に入隊した2回目の壁外調査の事でした。

お屋敷にお戻りになったお嬢様の両足がなくなっていたのです。
志半ばで戻ってきてしまったお嬢様は、さぞ悔しく思われていらっしゃることでしょう。
私、心配で毎日献身的にお嬢様の生活を支えました。
ですが、以前のように私を罵倒することも。
殴りつけることも蹴り飛ばすこともしなくなってしまったお嬢様が心配で仕方ありませんでした。

お嬢様がお屋敷にお戻りになってから、一ヶ月が経った時でした。
真剣な表情をしたお嬢様から、壁外調査での出来事を話して頂いたのです。


壁外調査で巨人に襲われ、死にかけたところを一人の兵士に助けられたと。


お嬢様はおっしゃいました。
両足を食われ、動けないお嬢様に向かい『さっさと逃げろ』といった鬼畜だったと。


『私以上の鬼畜を初めて見たわ!それなのに、私を助けてくれるという鬼畜の中に隠れた優しさ!
 ・・・一生のお願いよ。動けない私に変わってあの人のサポートをして欲しいの!!』


「・・・それでどうして俺の家に勝手に入ってる」

「私はメイドですので、兵士としてのサポートを行うことが出来ません。
 ですので、滅多にお屋敷に戻られないリヴァイ様に変わって、お屋敷の管理をしようと思いまして」

「とりあえず、出て行け」

「無理です。私の雇い主はリヴァイ様ではないので」

「だが、この屋敷の持ち主は俺だ」

「私はただ、主人の願いを叶えたいだけなのです!
 見たところ、誰一人と雇われておらず。
 リヴァイ様がいらっしゃらない間は、お屋敷は放置され埃を被っているようにお見受けします。
 私一人を置くだけで、毎日の掃除に布団干し。
 さらには帰宅した際の料理やお風呂の準備など。
 様々な事が楽になり、リヴァイ様にとってもお得だと思いますが?
 どうお考えでしょうか・・・・




 エルヴィン団長様?」


私は、身動きの取れないリヴァイ様の後ろで話に耳を傾けておられた調査兵団団長のエルヴィン・スミス様に声をおかけしました。
エルヴィン様の存在に全く気づいておられなかったリヴァイ様は酷く驚いた様子で、後ろを振り返っています。


「うむ・・・」

「ちっ・・・来てたなら、こいつを放り出せ」

「だが、悪い話ではない・・・そうだろう?」

「・・・・」


部屋を見渡したリヴァイ様は眉間に深い皺を刻む。
しばらくした後、深いため息を吐き出した。


「・・・掃除の腕は悪くないみたいだな」

「はい。見えないところも綺麗にさせて頂いております。
 屋敷の汚れはご主人様の顔を汚すも同意。主人に恥をかかせるなどメイドの風上にも置けません」

「縄をほどけ」


落ち着かれたリヴァイ様を見て、私はメイド服から小さなナイフを取り出し、彼の自由を奪っていた縄を全て解いていく。
縛られた箇所を確認してから、リヴァイ様は歩き出し部屋の隅々まで目を光らせる。
一通り確認し手満足したのか置かれているソファにどかりと腰を下ろした。


「いいだろう。お前にこの屋敷の管理をさせてやることにする」









=人類最強のメイドは、知略にも長けている=








「ありがとうございます、リヴァイ様。
 もし、承諾して頂けないようでしたらエルヴィン様に泣きつき、涙ながらに訴えるつもりでした」

「てめぇ・・・いい性格してるじゃねーか」

「どうやら、リヴァイにも苦手な人物がいるようだな」

「楽しそうに笑ってんじゃねぇぞ、エルヴィン」

「紅茶とコーヒーどちらにいたしましょうか?」

「私は紅茶を頼む」

「俺は「リヴァイ様はコーヒーですね?すぐにご用意いたします」・・・チッ」

「どうやら彼女は、とても“優秀”なメイドらしいな?」

「・・・・・・」



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