OP・連

□その10
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深夜。
使えない部下の始末に予想以上に時間が掛かり、約3日ぶりにクロコダイルはレインディナーズの地下にある部屋へと足を進めた。
昼夜の気温差が激しい砂漠にある建物の廊下もやはり夜は寒さを感じる。
部屋に入れば、それもないと思っていた彼は扉を開けたところで眉をしかめた。

人が・・・彼女が居るはずの部屋にあるはずのぬくもりがない。

廊下と同じか、それ以上にひんやりとした冷気が漂っている。
それはまさしく、ミィナの不在を知らせている。


「ミィナ」


呼んでも返事はない。
寝ているのかと思い、寝室へと足を向けるがそこにも彼女の姿はなく、ただ、ベッドの上に一通の

手紙。
クロコダイルはその手紙を手に取り、無造作に便せんを取り出す。


「あの女・・・!」


封筒の中を確認した彼の口からもれたのは、舌打ちと悪態。
部屋の中を確認すれば、クロコダイルとの生活で増えた彼女の服や装飾品は手つかず。
なくなっているのはミィナがここに来たときに持ってきた“大切な物”だけ。

クロコダイルは再び手紙に目を落とす。
「to Ser.C」と書かれた封筒に入っていたのは、便せんの上部に書かれたただ一言。


かすれた文字で『麦わらの元へ』ただ、それだけ。


つまり、彼女も王女や反乱軍や国王軍と同じ。
“アラバスタ”という“国”に捕らわれた愚か者だったのだ。
国にも反乱軍にも助けを求めることができないと分かっていたミィナは、王女が頼った“麦わら”に泣きつくことにした。

そこまで考えてクロコダイルは嘲笑を浮かべる。
その笑みは居なくなった彼女へか。
それとも寂しさを覚える自分自身へか。


「クハハッ!楽しみをふやしてくれるじゃなぇか!!なぁ、ミィナ!」


手紙を部屋に置き去り、出ていくクロコダイル。

その表情が哀しげなものだったなど本人は気づきもしない。

胸の奥の小さなうずきにも気づくことはない。






=鰐に似合わない苦痛=






彼は気づかない。

バランス悪く、上部に書かれた一言に続くインクのないペンでつづられた言葉に。

(麦わらの元へ、

  愛している 貴方のために)

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