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□「最後から始まる物語」
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ドクリドクリと腹部から流れ落ちる血液。
ああ、もうすぐ失血によるショックで死ぬのだと諦めて目蓋を閉じた。


「リウ、リウ!!なぜ?!どうしてお前が!!!」


私を抱き上げ、声を上げているのは、セブルスだ。
セブルス・スネイプ。
たった一人の女性を愛し、たった一人で戦ってきた人。
とても、純粋で。
とても、強い人。


「やっと、呼んでくれた・・・やっと、見てくれ、た・・・愛しい、ひ、と」


ああ。
どうしよう。
何も告げずに。
何も伝えずに。
逝くはずだったのに。
瞳からこぼれ落ちる涙を止めることができない。
全ての“想い”を込めてしまった涙が。
慌てたように私の涙を試験管に収めるセブルス。
手を伸ばして止めようとしても、力が入らないそれは彼を促しているようにしかならなくて。

違う。
そうじゃない。
私は、優しすぎる貴方に何も背負って欲しくはないから。
何も告げず、何も伝えず、逝くつもりだったというのに。


「リウ!どうして、貴方が!?」


ああ。
ハリーの声も聞こえる。
ハーマイオニーの息をのむような声も。
どうしてそんなに貴方達が悲しそうにするの?
私は、貴方達に何もできていないというのに。

もう、体はピクリとも動かない。
セブルスに抱きしめられているというのに感覚もなくなった。
視界も段々とかすれて、見えなくなっていく。


「セブルス・・・。泣かない、で・・・」


私の頬をぬらすのは私の涙だけではない。
私をのぞき込むセブルスの瞳からもこぼれ落ちる雫。


「だいじょ・・・ぶ、ずっと・・・そばに、ぃる。か、ら・・・」


ああ。

もう、何も見えない。

ああ。

もう、何も聞こえない。

私の最後の言葉は、セブルスに届いたかな?

ずっと、ずぅっと、私は貴方を見ていたんだよ?

貴方は知らなかったでしょう?

だって、貴方は百合の花(リリー)を見るのに必死だったもの。







=最後に貴方が見てくれた=
(それだけで、私はこんなにも満たされる)







「リウ、リウ!!!」

どんなに呼んでも返事などない。

腕の中で冷たくなった彼女の命が消えたのだと嫌でもわかってしまう。

「リウ!!!!」

リリーと同じ赤い髪。

リリーと同じ緑の瞳。

リリーとよく似た美しい顔立ち。

何度もリウにリリーを重ねた。

何度もリリーを護れなかった償いにリウを護ろうとした。

リウは“全て”解っていたのだ。

「“また”僕は、護れなかった!!」

遅かった。

全てが、遅すぎた。

失ってから、僕は“リリーの代わり”ではなく。

“リウ”を愛していたのだと理解した。

「また・・・またっ!!」

“僕”は“愛しい人”に何も告げることができなかった。


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