Short story
□君の名を呼ぶために
1ページ/4ページ
『歌姫』みんなは僕をそう呼ぶ。
幼い頃から変わらない女のような声。
女のような容姿。
母がたまたま応募したオーディションに受かり、それ以来毎日のように入ってくる仕事。
高校へも行けない日々が続き、とうとう嫌気がさしてきたある日、僕の声が、消えた。
テレビ番組は
『声を失った歌姫』
の話題で持ちきりだ。
医者によるとストレスが原因とのこと。
とりあえず仕事を休み、しばらく母の実家へ休養をとりに行くことになった。
一見母は僕の心配をしているように見えるが、実際のところ彼女は僕の生み出すカネにしか興味は無いのだ。
明日から当分の間、そんな母とも一緒に居なくてすむ。
それだけで心が軽くなった。
とにかくこの日は早めに電気を消して、眠りについたのだった。