Short story
□君の名を呼ぶために
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母の田舎のみんなは温く迎え入れてくれたし、なにより心がほぐれた。
ここに来て四日目、近所に住む青年が観覧板を届けに訪ねて来た。
年は…自分と同じくらいといったところか。
軽く頭を下げて挨拶すると向こうはつかつかと歩み寄ってくる。
名前は?と聞かれたので、近くにあった紙と鉛筆で答えた。
僕が喋れないのを彼は知っていたようで、丁寧に喋ってくれた。
『俺の名前は優介だ。年は19歳。』
それから僕たちは意気投合し、毎日のようにメールして出かけたりもした。
唯一彼にだけ過去の事を全て話した。
優介はただ泣き出す僕を抱き締めて、何度も、何度も
『大丈夫、大丈夫』
と、声をかけてくれた。
久しぶりに感じる人の温もり。
こんなにも安心できるものだったろうか。