Short Story
□貴方へ
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「ー…殺すための剣なんて、捨てちゃいなさい。」
「己の護りたいものを護るために、剣を振るいなさい。」
曇天の空を見上げて煙管をふかしながら、先生の言葉を思い出していた。
あぁ、松陽先生。
俺の話、聞いてくれるか?
銀時たちと、また喧嘩しちまった。
もうこの世界を壊せねぇんだと。
大切なものが出来たんだとよ。
護りたいもんが出来たらしい。
だから………
次会ったときは、殺すってよ…。
先生は言ったよなァ、自分の護りたいものを護るために……って。
でも俺が護りたいものってのは、あいつらしかわからねェんだよ。
あいつらさえいれば、世界がどうなったってかまやしねェ。
俺ァそう思ってんのによ、あいつらはもう違げェんだな。
なァ、先生。
でもな、俺は先生を奪ったこの世界を、どうしても許せねェんだ。
銀時やヅラと袂違っちまっても、それだけは譲れねェ。
先生、俺ァもうあいつらとは昔みたいには戻れねェのか?
あの時、似蔵の野郎が『同士』だと言いやがった。同士なんてもんじゃねぇ、もっと強い何か。があると思ったんだが、こんなにも簡単に崩れちまうもんなのかねェ。
俺ァ、もう1人なのか……
「晋助様?」
その言葉に意識を現実に戻すと、また子が心配そうに覗きこんできた。
煙管の煙を吹き掛けると、ふざけながら怒っている。
あァ、しょうがねェもう少しこいつらの面倒でも見ていてやるとするか。そう思いながら高杉は自室に戻ったのだった。
松陽先生、俺ァまだ一人にはなれねぇみてェだ。
もう少しこの世界も、楽しんでみらァ。
終わり
。