Short Story

□略奪
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今日は非番だから、あいつに会いに行く。

見た瞬間に、ときめいた。
まぁ、一目惚れってやつだ。

綺麗な銀髪に、時々輝く紅い瞳、そしてあの笑顔に、惚れたんだ。

あいつの過去なんて知らない。桂との関係なんてどーでもいい。

そう思った。

そして、思っていること全てを話したのは、一ヶ月位前のこと。

美味い大福を片手に、気分も上々で歩く。
今日は泊まっていくか。
俺達だって、もうやることはヤっているんだし、遠慮などはないだろう。

そんなことを思っていると、万事屋に到着した。


「おい、銀時。入るぞ?」

二人でいるときだけ呼ぶ、あいつの名前。

だが、中から話し声がする。
なんだか言い合っているようだ。

「もうおせーよ。」

「でもっ、お前は俺を捨てたんだろっ!?
もうやめてくれよ、………いまさら来たっておせーんだよ!!
それにもう、俺には……。
おいっ、もしもっ……。」

はぁ、とため息を一つつき、ソファーに寝転がろうとするところで、土方と目が合う。

「うおっ、ひ…土方!?」

「よぉ、…今の、誰だ?」

「いや、なんでもねーよ」

紅が、気まずそうに揺れる。
土方はもっと詳しく聞きたかったのだが、それ以上口を開きそうにない様子に、しぶしぶながらもあきらめた。

「わりぃな、ただの旧友だ。」

「そうか、……ほら、大福買ってきたぞ。酒もある。」

「大福食いてェっ!!
ちょ、皿持ってくるわ。」

「おうっ」


あいつの過去は、探らない約束。
別に銀時と決めたわけじゃない。俺が勝手に決めただけだが、それが1番いいような気がした。

「おまたせ、一緒に食うだろ?」

「おぅ」
あぁ、おれはその上目遣いに弱いんだって。

「なぁ、さっきから『おう』しか言ってねーけど?」

「お、おぅ」

「………バカ」

「なぁ、お前は、俺のそばにいるんだよな? ずっと、離れないよな?」

銀時は、一瞬不思議そうに土方を覗き込んだあと、ふわりとわらって、当たり前じゃん。と言って土方を抱きしめた。






















それから二週間後、今日は土方が泊まりに来る。
俺は、今日の晩飯の材料を調達しに、大江戸マートに来ていた。

「……やっぱりパスタかな。」

ペペロンチーノにすると、ニンニクの匂いが後で後悔するはめになる。
ここはやはり、カルボナーラが無難だろうか。

「よしっ、決めた。」

そう一人で呟いて、パスタと卵、それから甘味を買って、店を出た。


日が傾いてきて、空をオレンジ色に染めている。もうすぐ夜だ。そう思い、歩む足を速めようとしたその時、いきなり薄暗い路地裏に連れ込まれた。

ダンッ、と壁に押し付けられる。
目を開けるとそこには、

「――――高杉…」

「よぉ、久しぶりだなァ、銀時」

「なにしてっ――――」

最後まで言う前に、キスされる。
昔と変わらない、苦しいキス。
これが嫌いじゃない俺は、S失格だと自分でも思う。しばし懐かしさに浸る。

「……変わってねーじゃねーか、おめェも。」

「………変わったよ。俺にはもう、恋人がいる。」

「関係ねぇだろ。幕府の狗なんざ」

「なんで知って……」

「戻ってこい、俺んところに。」










愛してる。











そう言って高杉は、優しく笑って、銀時の額にキスをして消えた。











「捨てたんじゃねぇのかよ……」

「それは違うでござるよ。」

いきなり上からの返事に、驚く。
ござる口調のこいつは、高杉の部下、川上万斉だ。


「どーゆーことだよ?」

気配に気づけなかったことと、せっかく買った卵がほとんど割れてしまったことに少しイライラしながら聞く。


「晋助は………」





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