Short Story

□瞬間距離
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最近好きな奴が出来た。

そいつは、珍しい銀髪で、
死んだ魚みたいな、
でも綺麗な紅い瞳を持った奴だ。

クラスでもかなり目立つ存在で、おちゃらけてるけど真っすぐの芯の通ってるやつだ。

ここまで聞いたらわかると思うが、そいつは男で、俺も男。

まぁ、ホモってやつだ。
自分でも最初は異常だと思ったが、好きなんだから仕方が無い。

「よぉ、土方っ」

「あ?あぁ、はよ」

「んだよ、悩みでもあんのか?」

「あぁ、まぁな……」

ふざけて聞いた銀時に、俺があまりにも真剣に返したもんだから、銀色が一気に近づく。

「なんだよ、相談にならのるぜ?友達だろ?」

あいつの唇までの距離、10p、このままキスしたい衝動に駆られたが、ぐっと堪えて銀時と目を合わせる。
あ、今は真剣に輝いてる方の瞳だ。

「…男が男を好きなのって、おかしいか?」

「……あぁ……別に…おかしくないんじゃねぇ?
誰かを好きになるなんてことは、男も女も関係ないと思うし、」

「軽蔑しねぇか?」

「しねぇし、俺はその軽蔑するやつを軽蔑する。」

「お前、いいやつだな」

「いや、まぁ、いろいろあって………てかなんだ、好きな奴でもいんのか?」

紅の瞳が、一瞬揺らめいた。
……こいつにも好きな奴がいるってことか……?

「……あぁ、」

「土方に好かれるなんて、そいつ幸せじゃね?」

「―――ッ、そう思うか?」

「あぁ、土方イケメンだし」

こいつは気づいてねぇんだ。
おれが、今目の前にいるこの銀髪のことが好きで好きで仕方ないことを。


――――教えてやろうか?

「銀時、おれ、お前のこキーンコーンカーンコーン

漫画の様なタイミングで、授業開始のチャイムがなる。

「わり、土方、続きは昼休みに聞くわ。」

そう言って銀時は、自席に小走りで向かった。

―――昼休みまであと4時間。
つまり、俺がアイツに告るまで4時間って訳だ。
『軽蔑する』って言われたら、告る気なんてさらさらなかったが、軽蔑しない。そう言われた。
土方は、無意識に上がる口角を抑えながら告白の言葉を考えていた。















「おれ、お前のことが好きだ。」

「っへ?」

紅い瞳をおもいっきり見開いて、俺のことを見つめる。

「ずっと、好きだった。」

「………………」

「銀時?」

「………ん、ぉ……けど、、」

「え?」

「ごめんっ、おれっ、土方のこと好きだけど、今、付き合ってる人がいて……」

まさかの、予想していなかった事態。

「あのっ、好きって言うのは友達としてって意味で、その…」

俺がなにも喋らないのが不安なのか、銀時の目に涙が溜まっていく。

「ごめっ、ひ、じかたぁ。
友達としてしか、見れなっ…い」

こいつは、なんて可愛いんだか。
涙目の上目遣いとか反則だろ。
唇までの距離が約8cm。
俺とお前の距離は、少し開いてしまっただろうか。

「銀時、もういいから、悪かった。もう泣くな。
ただ、、、俺が勝手に好きでいることは許してくれるか?」

「俺のこと、嫌いにならないの?」

どんな心配をしてんだか。
そんなこと、あるわけがない。

「なわけあるか。これからもダチだよバカ。」

「ひじ、かた………」

その時、勢いよく屋上の扉が開いた。

「よォ、銀時。
土方、人のモンに手ェだすなよ」

「えっ……お前の付き合ってる奴って、まさか…」

「晋助っ」

「んだよ、テメェのために来たってェのに教室にいねぇから探したじゃねぇか。」

「わり、」

「代わりに今日サボり付き合え。おごるからよォ」

代わりに。と言っているのにおごるなんて、こいつはなにがしたいんだ。と思いながら、教室に戻ろうかと立ち上がる。

「じゃあ俺は行くから、また明日な、銀時。」

「あぁ、じゃぁね土方。」

「俺はきっと銀を諦めねぇからな。」

「奪えるもんなら奪ってみなァ」

「晋助?どしたの?」

「なんでもねぇ、いこーぜ」

「おうっ」

授業を受けながら校庭を眺めていると、外を歩く銀髪と不良。
ふざけながら歩くそいつらの後ろ姿が、妙に似合っていて、諦めない宣言をしたばかりなのに、俺の入り込める隙なんて、ないと思った。

アイツまでの距離、約100m。

「はっ、似合ってらぁ。」

そうつぶやいて、土方は坂本の声に耳を向け数学の問題に取り掛かるのだった。




おわり
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