Short Story

□素晴らしい世界
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足元には死体の山。

体中に浴びた返り血を洗い流すように、雨に打たれる。
この時期の雨は冷たくなくて、とても心地好い。
曇天の雲の切れ間から、太陽の光りが射し、俺達を照らし出したんだ。
キラキラと輝く銀髪を見て、俺はフッと笑った。そうしたら、あいつも俺のことを見て笑ったんだ。
俺はあいつの笑った顔が好きだった。キラキラと輝く銀髪も、今薄く細めている紅い目も、こいつの、全てが愛おしかった。




もう今さら、あの日には戻れないんだ。
俺は、あいつが戦争を抜けると言ったとき、笑顔で送り出せなかった。
死ぬのが怖いのか?とか、
今さら逃げ出すのか。とか酷いことを言ったっけ。

でもあいつは、最後まで笑顔だった。わりぃ、なんて言って、俺の前では笑顔だったんだ。
でも本当は知ってた。
お前が、夜に一人で泣いてたこと。孤独の檻の中で、ずっと、一人だったんだ。


許したくなかったんだ、お前のように、この世界を許せなかった。俺は壊すことに、逃げたんだ。
お前の声は、もう聞こえない。
俺達は、すれ違ったんだ。
もう同じ道を歩くことはない。
最後のキスをしたとき、一筋の涙を流していた。俺も、一筋だけ涙を流して、俺達は別れた。




「本気で好きだったんだぜェ? 銀時ィ…。」




俺の心なんて無関係に、歌舞伎町はカラフルなネオンを燈している。
夜風に舞う、煙管の煙と季節外れの桜。
お前のいない世界は、雑音が煩くて、俺一人が世界の隅で大声あげて泣いても、気づかれないだろうよ。


風に舞って入ってきたたくさんの桜の花びらが、俺の視界を白く染め上げた。




おわり
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