〜第9話〜

□第2節
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そのまた一方、全国の情報収集も終盤に差しかかったリュウには、もう1つ見たいものがあった。

それは、今はもう遺跡となってしまっているが、その昔大国として繁栄していたクセルクセスという国の過去である。文献によると、高度な文明を有していたにも関わらず、たった一夜で滅んでしまったらしい。

それだけならわざわざ過去を見ることもないのだが、このクセルクセスはアメストリスとシンという大きな国の間にある砂漠の中にあり、両国に錬金術を広めたという賢者と呼ばれる人物の出身地である、と伝えられているのである。

(ここに何か新たな発見があるかもしれない)

そう思ったリュウは今、クセルクセスにいる。

建物はそれなりに風化しているが、壁に施された装飾などを見ると、高い文明を持っていたことがよくわかる。

(それはさておき…)

静かに瞼を閉じ、リュウは集中力を高めた。

生きているものの記憶を辿るのとは違い、すでに滅んでしまった国の歴史を見るというのは簡単なものではない。
その土地、跡にのこっているもの全てに自分を同調させなければならない。

精神を研ぎ澄ませ、己という枠を広げ、リュウはクセルクセスと同調していく。

そうして数分が経ち、ようやく過去の世界へ入っていった。
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