〜第3話〜
□第2節
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一方。
昨日の晩から、リュウはセントラルにある国立中央図書館にいた。
例のごとく、すり抜けて入ったのである。
(入ってみたはいいものの、どの辺りから探ろうか…いや、全部読もう)
本来なら、最初にこの世界の全貌を調べなければならないのだが、どうやら「兄弟のために」という思いが脳の大部分を占めていたようだ。
(使命よりも個人的感情を優先させるとは…俺もまだまだ若いか…)
思い、苦笑が漏れる。
若い、と言ってもすでに7千年の時を過ごしているのだが、もっと早くに存在する「世界の傍観者」にとっては、人間で言えば子供同然である。
「さてと…」
リュウは、一番端の棚から順に(やはりパラパラ〜ッと眺めるように)読んでいった。かなりの冊数があったが、1冊に5秒ほどしかかからないため、エドワードがアルフォンスとウィンリイに同時にツッコまれた頃には、もう最後の1冊を手にしていた。
そして、
「…ふぅ〜、疲れた…」
全て読み終え、バレないうちにとさっさと図書館を出た。
あらゆる本、過去の新聞などを読み、いろいろなことがわかった。
(今のところ、この国の「負の原因」は東部内乱によるアメストリス人とイシュヴァール人の間にある溝か…しかし、何かもっと大きなものがあるよな気がする…それに、国全体の地下から感じる魂の気配…この国は普通じゃない。国の形も、最初は綺麗じゃなかったが円になるように少しずつ領土を広げていった。…やはり、錬成陣に利用するつもりか?何のために…それから、膨大なエネルギーが得られるという“賢者の石”と、“人造人間(ホムンクルス)”も気になるな…ん?もしかして、あの地下にいた奴らはホムンクルスなのか?いかにも「造られた人」だしな。賢者の石は何か関係があるのか…その辺は本に書いてなかったし、自力で探るしかなさそうだな)
ふと空を見上げる。今日は雲ひとつない晴天だ。
(それから、エドワードとアルフォンスの身体がある異空間のことも調べないとな…「完全に治るまで付き合う」って言ったしな)
そう。リハビリが必要なくなったらさようなら、ではないのである。
そこでふいに、彼らの姿を思い浮かべた。
魔法を、リュウを、信用できずに考え込んでいる顔。
(いつか、信じてくれる日はくるのかな…)