〜第4話〜
□第2節
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「………」
「………」
「………」
「…ねぇ、エド」
「…なんだ?」
「私たちも…外に出ない?」
ウィンリイが静かに言った。
「家の中ばっかりでしょ?だから、気分転換に」
「…そうだな」
エドワードも静かに答え、アルフォンスの方を見た。
「アル、頼む」
「うん」
アルフォンスに車椅子を押してもらい、後にウィンリイも続き、彼らは外に出た。
そこで3人が見たものは、
「いいぞーデン」
「ワンッ」
リュウとデンが仲良く遊んでいる風景だった。どうやら、リュウが投げたボールをデンがキャッチして戻ってきたところのようだ。
「………」
「楽しそうだね…デンも懐いてるみたいだし」
「うん…」
3人は、しばらく2人の様子を眺めていた。
と、そこでリュウとデンが彼らに気づいた。
リュウはにっこりと微笑みながら3人を見ている。その顔には優しさや愛しく想う心が自然と満ち溢れており、まるで親が我が子を見ているかのようである。
「………」
「………」
「………」
その表情は、子供たちにはどう映ったのだろうか。
それは、本人たちしか知らない。
やがて、3人はリハビリを始めた。
その様子を眺めながら、リュウは兄弟の失った肉体の在処を見つけられないことを悔しがった。
(しかし…)
リュウは考えた。
(仮に見つけることができて、身体を元に戻してあげられたとして…本当にそれでいいのだろうか?あの子たちは、絶望を見たに違いない。それでも立ち上がろうとしている。それなのに、いきなり現れた“得体の知れない”俺が簡単に治してしまったら…その決意が無駄になってしまうんじゃないか…?)
考え込む彼を、デンはじっと見ている。
子供たちも、リハビリをしながらリュウの様子をちらちら伺っている。
彼が何を考えているのかは、もちろん彼らに知る術はない。
(だからこそ…こうして「時間をかけて」、エドワードが普通に動けるようになるまで俺はここへ通う)
時間をかけて。
しかし、普通にリハビリをしていくよりは、早く。
正直にいってしまえば、リュウの魔法をもってすれば、リハビリなどいらないのである。
おそらく10分もしないうちに身体の痛みは消え、すぐに歩けるようになるだろう。
(はあ…)
すぐにでも治してあげられる、治してあげたい。でもそういうわけにもいかない。
2つの思いに挟まれて、さらに「これでいいのか」と悩み、彼の心は悶々としている。
考え込んでいるうちに、意識がぼうっとしてきた。「世界の傍観者」も時には睡眠が必要なのである。
(エドワード…アルフォンス…俺が…2人の…から、だ、を…)
そうしてリュウは、ゆっくりと眠りについた。
少し離れた地で、散歩をしていた犬が眠り始めたことなど、「彼ら」はもちろん、今の「彼」にも知る術はない。