novel
□遊覧デート(?)
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世はゴールデンウィーク真っただ中。一年に一度訪れるこの連休は、せわしない毎日の生活に、一時の憩いを与えてくれる。
渋谷の街は、そんな連休に精を伸ばしに来た家族連れやカップルなどであふれていた。
行き交う人々は、それぞれの目的の場所へと向けて歩を伸ばす。
ショッピング、映画館、美術館、ゲーセンなどなど……
天候は晴れに恵まれ、まさに休日日和である。
こんな日には、何かいいことが起こりそうな気がしてくるものだ。
そんな折、GWでにぎわう街中を一人の少女が歩いていた。
見た目はどこにでもいる普通の女子高生。
水色ワンピースに薄手の黄色いハーフジャケットをはおり、お出かけ用の体裁を整えている。
彼女は、とある場所へと向かっている所だ。
前方には雑居するビル群が立ち並んでいる。
その一角に、彼女の求める場所があった。
「さーて、着いたかな。愛しの1○9♪」
満足げな笑みを浮かべ、少女はビル街を仰ぐ。
1○9は彼女のお気に入りのスポットだった。
さすがファッションの名所だけあって、練馬にある普通の衣服屋とは品揃えが格段に違う。
ここへはたまにしかやって来ないが、豊富な数の商品があって衣類のジャンルも様々なため、どの服を選ぼうか毎回楽しみにしていた。
「せっかくの連休だし、今日は奮発するぞ〜」
意気揚々と、彼女はビルの入口へ歩いていく。
大人買いするために、財布にはいつもより多めの金銭を準備してあった。
今回、GWの予定が特になかった彼女は、好きな服のショッピングを計画。
いつもであれば、ユニ○ロなどの安価なショップで買うが、連休の謳歌にただ服を買うだけでは感慨がない。
どうせならと、大好きな1○9を漁り場に、気に入った物を大量購入することに打って出たのだ。
「ま、ほんとはハヤテ君と一緒に来たかったんだけどね」
少し残念そうに、少女が呟く。
彼女は、片思いをしている少年、綾崎ハヤテをショッピングに誘うつもりだった。
せっかくのGWなので、好きな人と一緒に楽しみたかったのだ。
そして、彼女は勇気を出して彼の携帯に電話をかけ、一緒に行けないかと聞いてみた。
しかし、携帯電話からのハヤテの返事は「すみません、僕、GWはバイトが入ってて……」というものだった。
少女は通話を終え、意気消沈してベッドに倒れ込んだ。
「アルバイトならしょうがないよね……ぁぁ…」
無情な結果に彼女は落胆を禁じ得ない。
勇気を振り絞って彼を誘ったのだが、結果はスカ。
運命の神様は、自分にそっぽを向いているようだ。