novel

□1章 第2話
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「―…スミマセン…見失いました…」


薄暗い路地に1人の女が立っていた

女の特徴は横に跳ねている髪が焦茶色のショートヘアーで、上下白のスーツを着こなしていた


『…まぁいい』


その路地にいる女とは別―明らかに男―の声がボソリとつぶやいた


『…とりあえず、早く捕まえてくることだな』

「分かっています…」


女以外に人影はない

だが女は実体のない声と会話を成立させている


『もし、裏切ろうとでもしたら―…』

「分かっています!」


女は声を荒げた

実体のない男の声はそれに臆する事無く続けた


『フン…分かっているならいい…』

「……」


男の言葉に女は歯を食い縛った

その行動が見えているかのように男は小さく声に出し笑った


『……忘れるなよ…お前は裏切ることを許されない』

「…はい」


女の返事の後、男の声はパタリと途絶えた

それを確認し、女は小さくため息をはいた


(……)


物思いにふけそうになった頭を左右に振り、女は薄暗い路地から日の当たる道へと踏み出した

その眩しさに目を細める


ザザァ…


港に着いていた船のうち1艘が海へと進んだ

何気なく見たその船の上に見覚えのある人影を見つけた


「―!!あの男っ…」


動きだした船は止まらない

今からではもう遅い

女―テコ・ソンランドは、捕らえなければいけない人間―イファン・G・アースノードをただ見送るしかできなかった



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