novel
□1章 第6話
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「お父様!!」
街に戻った女は自分の父親を見つけるやいなや、走り出した
それに驚き、声をかけられた男は振り返ると自分の娘がこちらに走って来ている
「おぉ…おぉメルア!!」
自分の娘の名を呼び、父親も走った
そのまま2人は抱き合い、再会を喜びあった
「――よかったわね」
ぽつりとテコは漏らした
そんな2人を4人は見ていたが不意にイファンは振り返り、歩きだした
「え、いいのか?何にも言わなくて」
「何を言えってんだよ」
質問してきたダルにそう返し、イファンは先を進む
それに気づいた娘――メルアは呼び止めた
「待ってください!!」
そして父親と一緒に近づいてくる
「もう行ってしまうのですか?」
「急ぐんで」
「せめて何かお礼をさせて下さい」
「別にいい」
「でも…」
「いい」
「そうですよ、山賊を相手にしてまで娘を助けて頂いたのに何もお礼をせずにいるのはこちらの気が収まりません」
「気にしないでいいんで」
「いいえ、そういうわけには…そうだ、娘が無事に帰ってきたのでちょっとしたパーティーを開こうと思うのですがご参加頂けませんか?」
「いやだから」
「パーティー!?」
キラキラと目を輝かせダルは男に聞き返す
その瞬間、イファンは嫌な予感が胸を過ぎった
「ええそれがいいです!是非ご参加して下さい!」
「パーティー!?パーティーってご馳走とかあるのか!?」
「おいダ」
「もちろん。シェフが腕によりをかけて作ってくれますよ」
「シェフ!?シェフってなんだ!?」
「私の家の専属の料理人ですよ」
「ちょっ」
「すげー!料理人なんているんだ!」
瞳の輝きはさらに増し、ダルはくるりとイファンに振り返る
「行か」
ポン
ねーぞ、と続くはずの言葉が肩に手を置かれ、遮られた
「…もう止められないと思うけど?」
マレアはイファンをそう諭した
(………何となく…こうなるのは分かってたけどな……)
こうも優しく諭されるとため息をつかずにはいられないイファンだった
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