novel
□1章 第7話
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――今、イファンは若干肩を落しながら町の通りを歩いていた
…それというのも、
パーティー会場であった出来事を知らない2人を連れて、イファンは足早に街を出た
夜の帳はとっくに下りていて外は当たり前のように暗かったが、月明かりを頼りに3人は道を進んだ
(途中、マレアに「なんか夜逃げしてる気分ね」と言われあながち間違いではないなとイファンは内心呟いた)
一心不乱に歩き続け(その間も不平不満をぶつくさ言われ続け)、そのおかげか陽の昇る頃には次の町にたどり着いた
明朝だったため店はほぼ開いておらず、仕方なくその時は町の外で野宿した(それに不平不満の小言が増えたのは言わずもがな)
目を覚ますと太陽は真上にあり、それに気付くと急に腹が空腹を訴えた(よくよく考えると一昨日からろくに食べていない気がする)
とりあえず今だ幸せそうに寝こけている2人を起こし、イファンは再度町に足を踏み入れた
――…暗がりでは分からなかったが、町と思っていたここはスラム街だった
マレアの話しによると、このスラムは首都の目と鼻の先にあるらしい
つまり首都の煌びやかな空間から弾き出された者たちの集まる場所、というわけだ
ならば、どうせ近いのなら首都で腹を満たそうとイファンは回れ右をした
が、それはがしりと掴まれた腕によって足を前に踏み出すまでには至らなかった
なんなんだ、と多少空腹のおかげで苛立った声で言えば腕を掴んだ人物はため息をついた
ため息をつかれる覚えのないイファンは眉間に皺をよせる(だって当然だろ?)
腕を掴んだ人物、マレアは口を悠々と開いた
「探険」
たった4文字
はあ?と言い、イファンはマレアを見る
たんけん、探険?
どういう意味だと問うと、マレアはいっそ清々しいまでに綺麗な笑顔を見せる
「ここを探険したいのよ」
言葉には確かに主語述語は入っている
だが意味を理解できない
ここを、つまりこの町を探険?
そうよ、と短く切られた肯定の言葉にイファンは目を一度ゆっくり閉じる
そしてまたゆっくりと時間をかけて目を開き、イファンはマレアにここがどんな場所か説明をするため重い口を開いた
「あのな…」
「探険!?」
色めき立った大声が隣から聞こえた
見遣るとそこには自分よりも歳も身長も高いはずの男が目を輝かせていた
はっきり言って成人男性のくせにそんな顔をするヤツとはお近づきになりたくない、のだがこいつの場合なんか様になっているから驚きだ
そこからは、…まあ想像の通りになったな
と、この状況に至るまでの経緯を改めて思い出しイファンは落としていた肩をさらに落としたのだった
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